結成10年、ケア手法統一に成果 重症児の在宅医療を考える会

結成10年目を迎えた「倉敷地区重症児の在宅医療を考える会」の会合

 脳性まひで人工呼吸器をつけるといった医療的ケアが必要な子どもらを支援する「倉敷地区重症児の在宅医療を考える会」が今年、結成10年目を迎え、成果を上げている。保護者をはじめ、医療機関や福祉施設、行政、教育といった関係組織が垣根を越え「共同して課題解決の行動を起こす」というスタンスで活動。全国で患者数が10年前の2倍近い約1・7万人となった今、医療機関で異なったケア手法を統一する倉敷発の先進的な取り組みが注目を集めている。

 同会は倉敷市内の小児科医が中心となり2010年春に結成された。重症心身障害児者が暮らす上での課題の共有や、生活の質の向上、社会参加拡大を目的として30人ほどでスタートし、関係機関の連携が進むにつれて参加者は5倍の約150人に増えた。

 

改善策探り行動



 当初は情報交換や勉強の場だったが、議論を重ねるごとに課題が鮮明になり、具体的な解決策や改善策を探り、さらには行動に移すようになった。

 例えば医療機関が重症児の家族に行う指導方法だ。

 胃ろうで栄養剤を注入し、その後、チューブ内を洗浄する際、ある機関では「さゆを50cc注入する」とされていたのが、別の機関では「空気を50cc入れるのがいい」と言われるなど、医療者には軽微と思われる手順や医療品の違いも、患者家族には混乱の原因となっていた。

 そこで会は各医療機関の説明内容や手法を調べ、人工呼吸器をつけるために気管を切開して入れた筒状のカニューレや周辺のガーゼの交換▽口や鼻、気管切開部からのたんなどの吸引▽胃腸へ入れたチューブやおなかに開けた胃ろうからの栄養注入といった手順を統一した。

 医師らが実際に行う姿も録画しDVDを製作。説明冊子も添えて県内の小児科医療機関、特別支援学校、県内の教育委員会、行政機関などに配布し啓発を図った。

 さらに学校でも医療的ケアが必要な子どもへの対応が増えているため、県教委の会議に出席して助言しているほか、医療・教育関係者、障害児者や家族の視点をふんだんに取り入れた観光パンフレットを作製するなど多様な活動を続けてきた。

 

新たな問題も



 昨年夏の西日本豪雨では新たな課題が浮かび上がった。

 災害時に高齢者や障害者ら災害弱者を受け入れる福祉避難所は高齢者への対応が中心。人工呼吸器をつけた障害児や家族にとって、避難所で必要な電源が使えるかどうか分からなかった▽避難所自体の使い勝手が悪かった▽行政や関係機関の安否確認に手間取った―などの問題があった。

 会は今後、メンバーの御牧信義・倉敷成人病センター小児科主任部長らを中心に、市と協働して改善策を検討していく方針だ。

 代表世話人の井上美智子・南岡山医療センター小児神経科医長は「重症障害児者に関する問題解決は、地域のバリアフリーや住みやすいまちづくりにつながる。倉敷がモデルになれば」と話している。

(2019年11月20日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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