12 誤飲 たばこ、薬、灯油、豆…注意

 十カ月の乳児。居間で遊んでいると急に泣いたので、見ると口からたばこの吸い殻がのぞいていました。お母さんは直ちに指で口から取り出しました。たばこの吸い殻が周囲に散らばっていました。おう吐が一回ありましたが、変わりなかったので、お乳を飲ませ、吐かさせようとしましたが出ませんでした。食べた量は少ないようでしたが小児科を受診。食べたたばこの種類と量が分からないとのことで、胃洗浄の処置を受けました。処置中、子どもは泣き叫びかわいそうで、お母さんは自分の不注意を悔やみました。

   ◇   ◇

 お母さんが口に残ったたばこを直ちに取り出したのは正解で、お乳を飲ませ、おう吐を試みたのも良かったです。さらに、たばこの種類、食べた量、時間的経過、症状の有無などの詳しい情報が分かれば、もっと良かったです。胃洗浄の処置でたばこのかすが出てきましたが、少量でした。

 一般に、子どもがたばこを一本も食べることは少なく、四分の一本未満では通常、様子観察でよいでしょう。しかし、今回のように「量がわからない時や四分の一本以上、何か症状がある場合」は、小児科を受診し、処置を受けるほうがいいでしょう。

 一般にニコチンの吸収は緩やかで、しかもたばこ自体にも吐き気を催す働きがあるので、重篤な症状が出現することは少ない。しかし、特に注意が必要なのは、灰皿に水が入っていたたばこを食べた、またはその水を飲んだ場合です。ニコチンがすでに溶け出ているので、吸収も早く中毒症状が出やすいからです。このような場合には、症状がなくても小児科を受診するのが無難です。

 <たばこの誤飲>

 冬場は屋内での喫煙が増えるので、たばこの誤飲もおこりやすい。特に、灰皿に水が入っておりそれを飲むと、たばこそのものを食べた時よりもニコチン中毒をきたしやすいので注意が必要です。症状は、おう吐や顔色がそう白となる、脈も速くなる。

 さらに、たばこには吸っている人が吸う主流煙と周囲の人が吸うことになる副流煙があり、特に後者(受動喫煙)が問題です。母親が、喫煙をする副流煙と母乳を介して移行して乳児の腹痛、夜泣きの原因ともなります。乳幼児では、呼吸器疾患の 罹患 ( りかん ) 率も高くなるので、喫煙は乳幼児のいる周辺では避けましょう。

 たばこは、乳幼児に見えたり手の届く場所に置かず、喫煙も外でお願いしたい。しかし、これを機会に禁煙するのが一番でしょう。

 家人のお薬を食べたり、飲んだりするケースもあります。冬の季節では、灯油を飲んだと言って来院する子どももいます。灯油の場合、牛乳を飲ませて吐かせることをしてはいけません。特に、灯油やガソリンなどは肺炎を起こしやすいので、必ず小児科を受診しましょう。消化管異物では、硬貨やボタン型電池類もあります。外科的な処置を必要とすることもあるので、症状がなくても医療機関を受診しましょう。

 <気管異物>

 夕方の時間帯に豆類を食べながら遊んでいる時に起こりやすい。特に脅かしたり、びっくりさせた時に勢いよく息を吸って異物を吸い込みます。気管内へ誤って異物が入り、そのために呼吸障害(せき、 喘鳴 ( ぜいめい ) 、チアノーゼ、呼吸困難、努力呼吸など)の症状がでる、緊急を要する事が多いので、小児外科のある救急外来を受診するのがよいでしょう。

 ピーナツとかナッツなど豆類のお菓子は、三歳ごろまで食べるのを控えるのがよろしいでしょう。お正月や節分の季節は特に注意しましょう。

 子どもは、まさかそんなことはしないだろうと思えることをします。大人は、このことをよく認識しましょう。屋内といえども、子どもには危険なものがいっぱいあります。常日ごろから特に、子どもの安全に配慮した屋内環境を整備しておきましょう。

 (山内芳忠・岡山医療センター臨床研究部長)

(2005年12月31日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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