17 インフルエンザ けいれんあればすぐ受診

 三歳の女の子が夕食後少し元気がないので、熱を測ってみると三八・七度ありました。そのまま寝かせて翌日小児科を受診すると、インフルエンザと診断されタミフルを処方されました。その日の夜、急に目つきがおかしくなり、ひきつけを起こしたので救急車で救急外来を受診しました。

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 インフルエンザは、主に冬に流行するウイルス性の病気で、熱、せき、のどの痛み、関節痛、 嘔吐 ( おうと ) 、下痢、頭痛など多彩な症状があります。

 診断は家族にインフルエンザにかかった人がいる、保育園、学校で流行しているなどの状況と、症状、診察所見、鼻水やのどの粘液を調べる検査の結果を総合的に判断して行います。この検査は、発熱後あまり早く行うと正しく診断できないこともあります。熱が出てすぐに検査をしたらインフルエンザ陰性だったのに、翌日検査したら陽性になったということがしばしばあるのです。

 インフルエンザの診断と治療は一分一秒を争う必要はありません。治療においても、タミフルなどの抗ウイルス剤は発症後四十八時間以内の使用で効果があることが証明されています。

 タミフルを使うと、使わなかった人と比べて治療開始後の熱の持続時間が短くなります。少しでも早く楽になりたいという希望に応えることは可能ですが、タミフルを使っても使わなくても脳炎や脳症を合併する頻度に変化はありません。熱が出ても慌てないで翌日受診したお母さんの判断は正しかったのです。ただし、眠れないほどせきが強かったり、頭痛、腹痛が我慢できないときは救急外来を受診してください。別の病気かもしれないからです。

 インフルエンザの発熱に伴ってけいれんを起こした、意識がおかしいという場合、その多くはその後の経過の良い熱性けいれんです。

 けいれんを見ると大変驚くものですが、慌てないでください。体を揺すったりしないで、静かに横にします。口の中を傷つけたり、吐く原因になりますので口の中に指や物を入れることは絶対しないでください。姿勢を楽にして衣服を緩め、吐いたものがのどに詰まらないように顔を横に向けます。落ち着いて目が一方にだけ片寄ってないか、片方の手足だけがけいれんしたり、硬くなっていないか、息はできているか、顔色はどうかなどの観察をしながら救急車を呼んでください。

 たとえ、けいれんが収まっても救急病院を受診してください。保護者の方が熱性けいれんとインフルエンザによる脳炎、脳症を見極めることは困難です。このお子さんも熱性けいれんで、一晩入院しただけで、元気に退院されました。

 家庭ではゆっくり休ませることが第一です。食欲がなければ無理に食べなくても構いません。口当たりの良いもので水分を与えてください。空腹で薬を飲むことも問題ありません。寒くない程度にしておけば、特に体を温める必要もありません。とにかく本人が楽という状態にしてください。

 熱が下がってもウイルスはしばらく残っているので、他の人にうつさないためにも、集団生活に戻るのは解熱後二、三日してからにしましょう。

 (岡山・三宅医院、森茂副院長)

(2006年02月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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