梅毒患者 岡山県内で急増 気づきにくい初期症状、早期治療を

「気になることがあれば医療機関を受診してほしい」と話す江口医師

 岡山県内で梅毒の患者が急増している。8日現在、医療機関からの報告数は176人と、現在の集計方法になった1999年以降で最多の2017年の172人を超えた。感染者に自覚症状がないのが拡大の大きな要因の一つで、近年は女性の増加も目立つ。放っておけば重症化する恐れもあり、梅毒に詳しい岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の江口武志医師(産婦人科)は「陰部や皮膚に少しでも異常を感じたら医療機関を受診してほしい」と呼び掛けている。

 ―今年第3四半期(7月1日~9月29日)の県内の報告数は50人。人口100万人当たりで全国3位から2位に上昇した。

 県内では17年から爆発的に増えている。特に女性の増加が特徴的だ。全体の報告数に占める割合は17年が23%の39人で、18年は38%の61人だ。今年は8日時点で35%の61人となっている。女性は20代と40代が多いのに対し、男性は幅広い年代で見られる。

 ―なぜ岡山でこれほど増えているのか。

 12年ごろから東京、大阪などの巨大繁華街を有する大都市での感染が目立ち始めた。梅毒は主に性行為によって感染するが、県内在住者がそれらの場所で性風俗店を利用して感染したことが考えられる。性風俗店で梅毒に感染した女性が県内に働きにきてうつされる可能性もある。全般的なことだが、不特定のパートナーとの性行為もリスクの一つだ。SNS(会員制交流サイト)やマッチングアプリなどで出会いの機会が増え、若い人の間で性行為に対する敷居が低くなっている影響もあるとみられる。

 ―感染するとどのような症状が出るのか。

 感染してから10日から3カ月ほどは症状がない。その後に性器などの感染部位に小さなしこりやただれができるが、痛みがないことが多い。股の付け根のリンパ節がはれることもある。3カ月ほど過ぎると病原体が体中に広がり、手足や体に赤い発疹が出る。女性は初期の性器症状に気付きにくく、皮膚の異常を感じて医療機関を受診するケースが目立つ。妊娠中に感染すると、胎児の死亡や先天異常など重大な影響を及ぼすことがある。

 ―感染を防ぐには。

 性行為の際にコンドームを使うことが基本だが、オーラルセックスでもうつるため、不特定のパートナーとの行為を控えることが望ましい。感染初期でも髄膜炎や脳神経症状などを引き起こすことがあり、早期発見、早期治療が何よりも重要だ。各保健所で匿名の無料検査を実施しており、積極的に活用してほしい。梅毒は適切な診断と治療で完治する。気になる症状を認めたら、速やかに産婦人科や泌尿器科、皮膚科などに相談してほしい。

(2019年12月16日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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