18 気道異物 ピーナツなど豆類要注意

 一歳八カ月の男の子。テーブルの上にあったピーナツの袋に手を入れて、何個か取り出して口に入れようとしていたのを見つけ慌ててしかったところ、びっくりして激しくせき込みました。口の中を見ましたが、ピーナツは見当たりませんでした。せき込みも数分でおさまったのでそのまま様子をみていましたが、その後、せきとゼーゼーが強くなってきたので病院の救急外来を受診しました。

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 小さな子どもがピーナツを口に入れていて急にせき込んだときは、気管や気管支に入っている可能性があります。お母さんがすぐに病院を受診されたのは大変良い判断でした。

 この男の子は、気管支にピーナツが入っていることが分かり、気管支鏡で摘出しました。

 食べ物やおもちゃの部品などが気道(空気の通り道=入り口は 喉頭 ( こうとう ) 、その下の中央の一本の管が気管、さらに左右へ枝分かれしていくのが気管支)に入った状態を「気道異物」と呼びます。乳幼児が口の中に豆類や小さなおもちゃなどを入れているときに、転んだり大泣きしたりすると、それらが気道に誤って吸い込まれることがあります。

 異物が気道に入ると、初めに粘膜への刺激のため激しくせきが出ます。喉頭の直下や気管に大きな異物が詰まると、場合によっては窒息によって亡くなることもありますが、むしろ多いのは比較的小さな異物が気管支まで落ちていって、そこで詰まってしまうことなのです。

 このような場合は、今回の症例のように初めに喉頭や気管を異物が通るときに激しくせき込んだ後、一度は症状がおさまったように見えます。このため、「せき込んだ時に出てしまった」と勘違いしやすいのです。

 実は、異物がさらに奥の気管支まで落ちていくと、激しいせき込みは止まりますが、しばらくしてせきやゼーゼーが出てきます。この状態で気付かずに長期間放置すると、肺炎を併発し最悪の場合は肺の一部を切除しないといけなくなります。

 気道異物の診断には、来院までの経過が重要です。どういう状況でせき込んだのか、どれくらいの時間がたっているのか、などを病院で説明してください。気道異物が疑われる場合は、聴診所見やレントゲン検査で診断し、最終的には気管支鏡で調べることになります。

 気管支鏡検査で異物が見つかれば、気管支鏡の中を通る特殊な道具を使って摘出します。摘出後は、粘膜の炎症の程度によりしばらくせきが残りますが、次第に軽快していきます。

 家での応急処置としては、逆さにして背中の肩甲骨の間を手でたたくなどにより異物が出てくることがあります。

 気道異物の大半は五歳以下、特に一、二歳に集中してみられることと、豆類、特にピーナツによるものが圧倒的に多いことから、この年代の幼少児にピーナツなどの豆類を食べさせるのは避けましょう。

 もし、口の中に気道異物の原因となりそうなものを入れているのを見つけたときには、なるべく驚かせないようにゆっくり出させるようにしてください。

 (岩村喜信・岡山医療センター小児外科医師)

(2006年02月25日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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