21 学童期の腹痛 持続すれば受診早く

 十歳の男児。午前中に、みぞおちからお 臍 ( へそ ) のあたりに鈍い痛みを感じ、食欲もありませんでしたが、熱もなく、吐いたり下痢をすることもないので家で様子を見ていました。しかし、夕方になって微熱が出て、 嘔吐 ( おうと ) も伴うようになりました。さらに、腹痛はだんだんと増し、右下腹部の痛みに変わってきて、身体を折り曲げるようになったためあわてて救急外来を受診しました。

   ◇   ◇

 保護者の方は大変良い判断をされました。このお子さんは緊急に外科手術が必要な病気でした。あまり待ちすぎると大きな手術になってしまう可能性がありました。

 このお子さんの病名は急性虫垂炎でした。一般に「もうちょう」といわれている病気です。大腸の始まりにあたる盲腸という部位にくっついている虫垂の 内腔 ( ないくう ) が何らかの原因で 閉塞 ( へいそく ) し、そこに感染が加わるために起こると考えられています。

 内科的に治療する場合もありますが、原則的には手術が必要となります。小児では成人と違って、診断が困難で進行も早いため、容易に虫垂が破れて重症化するので注意が必要です。このお子さんは幸い診断が比較的早期についたため、手術も大きなものにはならず早期に退院できました。

 学童期の急性腹痛の原因はやはり腹部の疾患によることが最も多いです。乳幼児と同じく頻度が最も高いのは感染性胃腸炎で、尿路感染症、便秘が続きます。緊急を要するものとしては、急性虫垂炎、 鼠径 ( そけい ) ヘルニア 嵌頓 ( かんとん ) 、精巣 捻転 ( ねんてん ) 、卵巣 嚢腫 ( のうしゅ ) 茎 ( けい ) 捻転などがあります。

 しかし、腹部の病気の他に急性上気道炎や肺炎といった呼吸器疾患、さらに年長時では心因性の場合も少なくありません。また腹部外傷も忘れてはなりません。

 緊急性の高い腹痛は、嘔吐を伴う激しい腹痛です。また、三時間以上急性の腹痛が持続する、その程度が徐々に悪くなる場合は緊急性が高いと考えられます。すべてが外科的治療を必要とするわけではありませんが、手遅れにならないうちに受診する必要があります。

 一般に、嘔吐が先に来て腹痛が後から来る場合は急性胃腸炎のような内科的病気、腹痛が先に来て嘔吐が後から来る場合は虫垂炎のような外科的な病気が多い傾向にあります。また、腹痛の部位が臍から離れた部位であるほど、虫垂炎など器質的な疾患がある可能性が高くなります。

 前に述べました急性の激しい腹痛の中には緊急に外科的治療が必要な場合がありますので、持続するときには速やかに病院を受診しましょう。逆に、痛みがそれほど強くなく、食欲などがあって全身状態が良いときには、夜間であれば翌日にかかりつけの先生を受診するのでよいと思われます。

 (久保俊英・岡山医療センター小児科長)

(2006年04月01日 更新)

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