(6)特定行為研修修了者に期待される看護師の役割拡大 岡山ろうさい病院集中治療室特定看護師 満濃千春

満濃千春特定看護師

 今回は看護師の特定行為についてお話しさせていただきます。

 わが国では、2025年に団塊の世代すべてが75歳を迎え=図1、慢性疾患や、複数の病気を抱えた患者さんが最大数になると言われています。超高齢社会に突入しており、限られた医療資源で多くの高齢者を支えるため、チーム医療(1人の患者に複数の医療専門職が連携して治療やケアにあたること)の推進▽医療者の役割拡大や医療機関の医療機能の分化・連携▽在宅医療の推進―など、さまざまな医療提供体制の改革が行われています。

 医師が都市部に偏在することによる地方の医師不足が問題視される一方、医療の高度化や複雑化が進む中、急性期から在宅医療まで、質の高い安全な医療をすべての患者さんに提供するためには、チーム医療は不可欠となってきています。

 こうした背景により、看護師への社会的期待は高まっており、今後の急性期医療から在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成することを目的に、15年から「特定行為に係る看護師の研修制度」が開始されました。

 特定看護師(当院での呼称)とは、一定の診療の補助(例えば脱水時の点滴など)について、医師・歯科医師があらかじめ作成した手順書(指示)によって、迅速に処置することができる看護師を指します。

 特定行為は診療の補助であり、看護師が実施する場合には、具体的な行動を行うための理解力や判断能力、高度で専門的な知識と技術が特に必要とされます。比較的危険性の低い医療行為を特定行為として定め、厚生労働大臣が指定した研修機関で研修を修了することにより、特定看護師として活動することができます=図2

 特定行為研修制度により期待される効果として、研修を受けた看護師が患者さんの状態を見極めることで、迅速な対応が可能になることが挙げられます。また、複雑化した医療現場において、チーム医療を円滑に行う潤滑剤のような役割を担うことにより、連携が強化され、最善の医療が提供できます。

 さらに、特定看護師は研修で医学的な知識を学んでいますので、患者さんやご家族の立場に立った分かりやすい説明ができ、「治療」と「生活」の両面からの支援に貢献できると期待されています。

 通常、患者さんの容態に変化が生じた場合、医師に状態を報告し、医師の判断と具体的な指示を得てから処置します。特定看護師の場合は手順書に基づいて処置するので、医師への報告や指示を待たずに迅速な対応が可能となります。

 当院は、20年度より労働者健康安全機構と協力し、特定行為を実践できる看護師の育成を開始します。地域医療及び高度な医療の現場において、チーム医療のキーパーソンとして、医療および看護の質向上と勤労者医療の貢献につながるよう取り組んでいきます。

 現在は特定看護師1人での活動ですが、来年度以降は研修を終えた看護師が増え、特定看護師として活動する予定です。看護の専門性を主体とし、医師と同等の特定行為を安全に実践することで、患者さんの重症化回避や早期回復のために尽力してまいります。

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 岡山ろうさい病院(086―262―0131)。連載は今回で終わりです。

 まんのう・ちはる 1994年川崎医科大学高度救命救急センター入職。高梁市川上診療所勤務を経て、2012年より岡山ろうさい病院集中治療室勤務。18年度特定行為研修修了。

(2020年02月03日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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