AIが問診 外来効率化 岡山旭東病院システム導入

タブレットをタッチしてAIの問診に答える女性患者。操作は初めてだったが5分ほどで入力を終えた=岡山旭東病院

 主に初診の患者が現在の症状や過去の病歴などを記入する問診票を電子化し、AI(人工知能)を使って医師がカルテに書き込む医療用語に「翻訳」するシステムが普及しつつある。問診時間の短縮やカルテ作成の効率化が狙い。岡山県内でも、岡山旭東病院(岡山市中区倉田)が1月から導入した。事務作業を減らし、患者と向き合って診察する時間を増やすことで、医療の質も向上すると期待している。

 AI問診システムはUbie(ユビー)社(東京)が開発した。これまでに全国100以上の医療機関で稼働しており、岡山旭東病院は1月17日から運用している。

回答により質問変化

 従来の一般的な紙の問診票では、体のどこに症状があるか、過去に手術を受けたことはあるか―など十数問の質問に患者が手書きで記入していた。分からないことがあると看護師に尋ねるなどして、平均で1人10分程度かかっていたというデータもある。

 AI問診では、外来を訪れた患者は専用タブレットを渡される。まず、五十音キーで「いたみ」「ねつ」などと主な症状をタイプすると、それに沿って「背中の痛みがある」などの候補が表示され、該当するものを選んで次の質問に進んでいく。

 紙の問診票との一番の違いは、回答によって次の質問が変わること。背中の痛みなら、「膵炎(すいえん)になったことはあるか」「胸がどきどきしているか」など、AIが考えられる病気を推測して尋ねてくる。選択肢の中から選んだり、体の図から症状の出ている部分をタッチしたりする簡単な操作で、大半の人が3、4分で終了するという。

 手の痛みで岡山旭東病院の整形外科を受診した女性も、初めて使ったというタブレットを操作し、5分足らずで入力を終えた。操作に迷うこともほとんどなく、「手で書くより楽でいい」と話していた。

より深い診察目指す

 こうした機能は、同社が医療関係の論文など約5万件をデータベース化し、AIに学習させて実現している。タブレットの入力内容はクラウドサーバーを通じ、医療用語を交えた文章に変換され、医療者用の端末に表示される。症状と関連する可能性があると判断した病名もリストアップし、診断を補助する機能も備えている。担当医は内容をコピーし、電子カルテに転載すればよい。

 岡山旭東病院は脳神経外科、整形外科など13の診療科すべてで紙の問診票を廃止した。初診患者は1日約40人おり、問診時間が1人6分程度短縮できるとして、年間約1千時間の削減効果を見込んでいる。

 医師がキーボードを操作してカルテに入力する手間を減らすことで、患者と直接向き合う時間を確保することも狙いだ。土井章弘院長は「診察室では緊張して、自分の尋ねたいことを医師に言えない人もいるだろう。AIの質問なら答えやすく、医師はその回答をもとに、さらに深い診察ができるのではないか」と話している。

(2020年02月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP