ロタウイルスにご用心 3、4月流行期、専門家に対処聞く

「嘔吐が続くようならすぐ病院に行き、重症化しないよう早期対応を」と呼び掛ける国富医師

 3、4月は、子どもに多い感染性胃腸炎の一種「ロタウイルス」の流行期。乳幼児が発症しやすく、重症化すれば死に至る例もある。免疫があればかかりにくくなるため、予防接種が重症化を防ぐ有効な手段。10月から定期接種(定められた期間内は無料)になるものの、現在は任意接種(受けるか受けないか選択でき、自費)で、高額なため日本の接種率は6割程度と言われている。子ども予防接種週間(3月1~7日)に合わせ、初期症状や対処法、予防策を岡山県医師会の国富泰二感染症対策理事(78)に語ってもらった。

どんな病気? 乳幼児に多い感染性胃腸炎

 ロタウイルスは、感染性の胃腸炎を引き起こすウイルスで、5歳までにほぼ100%感染する。免疫のない乳幼児が感染し、嘔吐(おうと)や下痢などの症状が出ると、その1割程度が重症化するというデータもある。

 怖いのは、乳幼児は嘔吐や下痢を繰り返すと脱水症状になりやすい。重症化すると脳炎や脳症といった合併症に移行する可能性があることだ。

 看病する大人にはかかりにくい。子どもの時に感染して免疫があるからだ。逆に言えば、免疫があれば、発症や重症化はかなり高い確率で防げるということ。だからワクチンの接種が重要になる。

初期症状 嘔吐や白い便発熱ほぼ半数

 日本では2011年から任意接種になった。2回接種と3回接種の2種類あり、いずれも飲むタイプの生ワクチン。2種類とも初回は生後6週目以降で、2回接種は2回目を10~24週までに、3回接種は3回目を14~32週までに接種するよう制限がある。2種類とも3万円前後費用がかかることもあり、接種率は6割ほどと言われている。

 発症した際はどのような様子かというと、潜伏期間が2日間ほどあり、それから嘔吐が始まる。さらに、便が水っぽくて白く濁った「米のとぎ汁」みたいになるのが特徴。発熱するのは半分程度だ。嘔吐と下痢で乳幼児は脱水症状を起こしやすいので、まず嘔吐が続いたらロタウイルスを疑い、診察を受けてほしい。

 発症した場合、効果のある抗ウイルス剤はない。脱水状態を緩和し、栄養補給するための点滴など対症療法が中心になる。

対策 予防接種有効重症化回避を

 ロタウイルスは、吐しゃ物や便に含まれ、そこから何らかの形で手につくなどし、そこから広がっていく。やっかいなのは、インフルエンザウイルスには効果が高いアルコール消毒剤が、あまり効かないところ。おむつを取り換える時は、使い捨てのゴム手袋を使い、すぐポリ袋に密閉する、手洗いはせっけんをつけて20秒以上、流水でしっかりもみ洗いするなど、基本的な対策を取ってほしい。

 それでも感染力が非常に強いため、拡大を防ぐのは難しい。やはり予防接種が一番の対策になる。

 その予防接種は10月から定期接種になる。「予防接種で防げるものは防ぐ」というのが感染症対策の基本的な考え方。2012年10月から予防接種費の半額を助成している名古屋市では接種率が90%を超え、ロタウイルスによる1歳未満の入院率が、助成制度導入前に比べ7割以上減ったという研究結果もある。定期接種になるのは非常に意義のあることだ。

 ただ予防接種のスケジュールはさらに複雑化する。接種漏れがないよう、母子手帳できちんと確認してほしい。また分からないことがあれば、かかりつけ医や居住する地域を管轄する保健所に相談してもらいたい。

(2020年03月02日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

カテゴリー

PAGE TOP