(1)患者さんのために おおもと病院総看護師長 秋山裕恵

おおもと病院の看護ステーション。一日のスケジュールや患者の注意点などを確認し、情報を共有しながら看護に当たっている

乳がんの手術を執刀する山本理事長(左)

秋山裕恵総看護師長

 おおもと病院は1977年2月に開設された、乳腺疾患と消化器疾患の専門病院です。開設者である山本泰久理事長は、岡山大学病院で多くの乳がんの患者さんを診療してきました。次第に患者さんが増えて病床数が不足し、他の病院にお願いすることが増えたため、乳がんを専門とする医療機関を創ることを決めたそうです。

 現在、病床数は51床。乳腺や消化器の各種学会専門医に加え、がん看護専門看護師、乳がん看護認定看護師も含めて約100人の職員が在籍しています。私たち職員は、患者さんやその家族の期待に応えられるよう、自分の役割を認識し、専門性を発揮できるよう力を尽くしております。

日々研さん

 迅速で正確な診断と早期治療を目標に、山本理事長、磯崎博司院長をはじめとする各医師が実績を重ね、知名度も向上しました。昨年は約3万2千人の外来患者さんが岡山県内外から来院されました。

 がんの治療には早期発見は欠かせません。そのために、消化器疾患では内視鏡検査が効果的です。当院は大きな病院ではありませんが、食道・胃、大腸の内視鏡検査の実績は年間6千件以上に上ります。

 消化器疾患のスペシャリストである磯崎院長は、患者さんの身体的、精神的な負担をいかに軽減できるかを常に考え、術後の創部の感染予防の工夫、腹腔(ふくくう)鏡下手術の腕を磨くなど自己研さんを重ねています。消化器疾患が専門ですが、最近は、乳がんの勉強も積極的に取り組んでいます。

不安をくみ取る

 一方、当院で昨年、乳房の検査を受けられた患者さんは約3千人です。主にエックス線によるマンモグラフィと超音波の検査です。

 当然のことですが、がんは場合によっては命に関わる病気です。万一のことが心配になって、強く緊張して検査を受けられる方も多いと聞きます。超音波検査は、プローブを胸にあてる検査です。マンモグラフィの検査では撮影台の上に乳房をのせ、透明な板で圧迫して撮影します。

 当院では女性の技師が担当します。検査に対する不安が少しでも和らぐように、話しやすい温かな雰囲気づくりに努め、患者さんの言葉から揺れる気持ちをくみ取りながら対応をしています。

ともに喜び、泣く

 当院では、主に乳がんの治療を受けた患者さんが集う「おおもと会」「ピンクリボンの会」があります。お互いの経験や悩みを話したり、楽しい話を聞いたり。病院の医師、看護師とも話し合うことができます。「誰かに思いを話す」「誰かに話を聞いてもらう」というのはとても大切なことです。つらい思いを分かち合うことで心の重荷が少し軽くなり、治療や日常生活にも前向きになれます。

 私は患者さんにとって一番身近な存在は看護師だと思っています。長く通院されている患者さんが「そばにいてくれるだけで居心地がいい」と言ってくれた言葉が心に残っています。当院のような中小病院では、知らず知らずのうちに患者さんと顔なじみになり、自然に声をかけたり喜びあったり、心配したり、泣いたりできる関係になっています。そこが人間らしくて、とても良いところであると思います。

 この病院を支えてきたのは、理事長をはじめとする医師、看護師などすべての職員の力です。「おおもとチーム」で患者さん一人ひとりを支えていく気持ちで、理念である「地域社会に信頼される病院」を目指しています。

     ◇

 おおもと病院(086―241―6888)

 あきやま・ひろえ 大安寺高校、川崎医療短期大学卒。川崎医科大学附属病院を経て1990年におおもと病院に入り、2019年から総看護師長。消化器内視鏡技師。

(2020年04月20日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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