教訓学び防疫意識高めて 木下岡山大客員研究員が警鐘

木下浩氏

 世界中で猛威を振るう感染症の流行は、今回の新型コロナウイルスが初めてではない。コレラ、腸チフス、赤痢、天然痘、スペイン風邪と呼ばれたインフルエンザ…と、明治時代以降にさまざまな感染症が流行し、対策を取ってきたことが記録されている。岡山県内の感染症の歴史について調べている岡山大医学部客員研究員の木下浩氏は「過去を振り返り、教訓を学ぶことが重要だ」と警鐘を鳴らす。

 木下氏は、県統計書などの資料を基に、1880(明治13)年から1941(昭和16)年までの主な感染症による県内患者数と死者数を調べた。それによると、爆発的な流行や抑え込みが繰り返されているのが分かる。

 幕末に日本に入ったとされるコレラは、1880年には県内の患者は7509人で、死者が4556人に上った。続く数年は患者、死者とも2桁程度になるが、86年に再び患者2521人、死者1821人に急増した。その後も数年に1度の周期で流行しながら、徐々に患者・死者数が減っていく。

 赤痢も83年に448人の患者に対し124人が死亡した。ピークは94年で患者1万6618人、死者は3921人を数えた。その後は患者・死者数とも減少傾向となり、爆発的な流行は起きていない。

 県内の詳細な統計はないが、1918年から流行したスペイン風邪では国内で2500万人が感染し、38万人が死亡したといわれる。当時、内務省が都道府県に通達を出していて、木下氏によると、流行地では民衆の集合を避ける▽マスクを着ける▽うがいをする▽異常を感じたときは医師の診察を受ける▽患者は隔離する―といった内容だったという。ただ、移動や都会の人混みの制限は徹底されず、流行が拡大したとされる。

 国内の公衆衛生施策により社会環境が整ったことで、感染症の患者数は65年ごろから激減するが、20世紀以降も全世界で、エボラ出血熱、エイズ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)などが発生し、感染症の脅威は消えていない。

 木下氏は「現代は過去と比べて情報と医療の発展という武器がある。多くの犠牲者を出した悲劇から学び、防疫意識を高めることが大切だ」と話している。

(2020年05月14日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP