(6)東区初のDMAT指定病院として、複合災害の危機を考える―新型コロナウイルスの感染拡大+地震を想定して 岡山西大寺病院理事長 小林直哉

 熊本地震から4年、西日本集中豪雨災害から2年近くとなります。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が混乱している中、もしこのような災害が起きたらどうなるのでしょうか。

3密と3不

 もし今、地震が発生したらあなたは避難所に行きますか、それとも自宅にとどまりますか?

 避難所は「3密」(密接、密集、密閉)に、不便、不満、不衛生の「3不」が加わった状態となります。病院は新型コロナウイルスへの対応で手いっぱいです。ライフラインが止まり機能不全に陥る病院が多いことが予想されます。

 避難所に行けば新型コロナウイルスに感染するリスクは避けられません。しかし、自宅にいたら倒壊の危険性があります。自宅が倒壊する危険性がなければ避難所に行く必要はないし、家にいることが最も命を守る方法ということになりませんか。そのためには地震後も安全に暮らせるだけの備えが必要なのです。

災害に対応できる病院

 岡山県南東部に位置する当院も、地域に根ざした基幹病院として、災害時に地域住民の健康を守る必要があります。2016年5月の新築移転を機に、岡山市東区としては初めてとなる災害対策が可能な病院づくりを目指しました。

 ハード面としては、屋上にヘリポートを設置、海抜の低い地域にあることから50センチの盛土の上に病院を建て、出入口には防潮堤を設置し、非常用発電機は屋上へ設置しました=図1。ストレッチャー化できる外来待合椅子も採用しています。

 院内では定期的な院内委員会を開催し、BCP(事業継続計画)や各種マニュアル等を見直し、職員の災害に対しての意識を統一し、常に効率的な活動ができるよう取り組んでいます。

 19年8月にはDMAT(災害派遣医療チーム)を1チーム編成しました。

DMAT

 DMATは専門的な訓練を受けた医療チームで、基本的に1チームおよそ5人(内訳は医師1人、看護師2人、事務など2人)で編成されています。要請があれば、すみやかに被災地や事故現場に駆け付け、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携をとりながら、救助活動とともに医療活動を展開します。

 誕生のきっかけは1995年の阪神・淡路大震災でした。死者6434人のうち約8割が圧死で、がれきの下で多くの尊い命が失われました。この教訓から災害現場における医療の重要性が見直され、DMATの発足につながったのです。

 2005年に発生したJR福知山線脱線事故では、阪神・淡路大震災の教訓が生かされました。事故直後から医療合同チームが大破した車両の中に入り、クラッシュ症候群を警戒して点滴をしながら救助する「がれきの下の医療」が実践されました。

災害医療とは

 災害医療の最優先課題は「いかにして救うことのできる命を救うか」です。そのため、傷病者の緊急度や重症度を考慮し、治療や搬送の優先順位を判定する「トリアージ」が行われます。傷病者は災害支援病院などのほか、近隣の医療機関で応急手当を受け、治療が困難な重症患者は広域災害支援病院へ搬送されます。航空機等を使用して広域医療搬送を行うこともあります。こうした際には、ヘリポートが必要となります。

 さらに、災害医療には、救急医療のほかに災害関連死、避難所などでの感染症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言われる生命の危機を体験したり家族や友人をなくした心の痛みのケアなど、幅広い対応が求められます。

自助が基本

 防災の一番の基本は、自分で自分の身を守る「自助」、個々の家庭での防災です。自分がけがをしてしまったら、家族を救うことも隣人を助けることもできません。そうならないよう、家庭では図2のような備えをしておきましょう。

 今、医療関係者は、ウイルスという見えない敵と戦い、大変な状況になっています。複合災害が起きてしまえば医療体制は瞬く間に崩壊します。少しでも被害を抑えられるように、市民のお一人お一人が、さまざまな災害を想定して備えていくことが大切な時期ではないでしょうか。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)。連載は今回で終わりです。

 こばやし・なおや 岡山大学医学部卒、同大学院医学研究科修了(医学博士)。同大学医学部外科学第一講座を経て、米国ネブラスカ州立大学医療センターで臓器移植や再生医療に従事した。2010年、岡山西大寺病院院長。12年から同理事長。岡山大学医学部医学科臨床教授。

(2020年05月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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