犯罪被害者等カウンセリングアドバイザー 岡山県警から感謝状 川崎医療福祉大学臨床心理学科教授 臨床心理士 公認心理師 進藤貴子さん

進藤貴子さん

 川崎医療福祉大学臨床心理学科教授で、臨床心理士の進藤貴子さんは、岡山県警の犯罪被害者等カウンセリングアドバイザーを2010年から務めている。丸10年となる今年8月には精神的被害の回復に長年にわたる功績があったとして、県警から感謝状が贈られた。事件で肉親を失った深い喪失感や、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む人々に「心の専門家」としてアプローチし、平穏な日常生活を取り戻すための支援をしている。その活動について、話を聞いた。

 ―事件直後の被害者やその家族たちは、どのような状態にあるのでしょうか。

 例えば殺人事件では、多くの場合、事情聴取などが一段落し、ご遺体との対面や葬儀が終わった後にお会いします。遺族の方々はなすべき事をなし、きちんとお話しをしてくださる方も多いのですが、その様子は顔面蒼白(そうはく)です。感情がまひし、現実感のない「解離」というような状態です。表面とは裏腹に、心の中では生々しい感情が激しく渦巻いているのです。

 ―どのように声をかけるのですか。

 初対面では「あなたが体験してこられたことを一緒に受け止められるよう努力したい」、そういうふうに自己紹介も含めて話をしています。その方が何を語ってくれるのかはさまざまです。捜査状況を説明する人もいるし、亡くなった肉親がどんな人であったとか…。口をつぐんで言葉にならない人もいます。そういうときでも、お気持ちを想像しながら声をかけます。声を出すのは「私という人間がここにいる、あなたと一緒にいる」と言うことを、お伝えするために大事なことだと思っています。

 ―遺族の方々はどのように事件を受け止めていくのでしょうか。

 最初の1年、2年は混乱ばかりです。だから何とか日常生活を送れるようにと考えています。もちろん、何年たっても事件の記憶や肉親を失った事実は消えません。ただ、喪失感が大きいと亡くなったことを認められない気持ちもあります。だから「もういない」という現実に直面したとき、すごい痛みを感じるのです。その段階から、いろんなことを経て、お弔いというか、ご供養をしようという気持ちが芽生えるときがあります。お供えや陰膳をしたりと、ご供養ができるというのは、亡くなったことに向き合うもう一つの段階かなと感じています。

 ―カウンセリングで大事にしていることは。

 その時の気持ちを、その人の言葉で表現していただき、その言葉を私がしっかり受け止めることが、その人が人生に対するコントロール感を取り戻すきっかけになると思っています。痛みの記憶を語ることによって、こびりついた複雑な感情の塊が少しずつ「昇華」していきます。語れないと、それが破壊的な力を持ち、病の元になることもあります。でも、語るときにも痛みがあるのです。その痛みを、そばで聞いている私が受け止めることで、少しでも耐えやすいものにならないか。それを心がけるようにしています。

(2020年09月21日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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