(5)胃がんと診断されたらどんな治療があるの? 天和会松田病院副理事長・外科 松田達雄

 胃がんは徐々に減少してきているといわれていますが、全てのがんの中で診断される人が2番目に多い(1位は大腸がん)、非常に注意が必要ながんの一つです。

 胃がんと診断されたら、治療法はがんの進み具合によって(1)内視鏡治療(2)手術(3)抗がん剤治療のいずれかを選択することとなります=図1

 (1)内視鏡治療

 胃カメラを使って胃の内側からがんを切り取る方法です。他に転移する可能性が低い早期胃がんの一部が適応になります。手術と比べると体の負担が少なく、胃も残るため、食生活に対する影響が少ない方法です。とれたがんの結果によって追加で手術が必要になるか、内視鏡治療のみで経過観察とするかを判断します。

 (2)手術

 術式=胃の切除範囲によって、胃全摘▽幽門側胃切除(胃の出口側を摘出)▽幽門保存胃切除(胃の真ん中を摘出)▽噴門側胃切除(胃の入り口部分を摘出)の四つの方法があります=図2。胃の切除範囲はがんのある部位や進行度によって決まってきます。胃を全部とると、どうしても食事摂取量が落ち、術後の生活の質が低下するので、がんを安全に取り切れるのであれば、胃を温存する術式が望ましいです。

 手術のアプローチ法=開腹手術▽腹腔鏡手術▽ロボット手術の三つのアプローチ方法があります。早期胃がんには腹腔鏡手術が近年盛んに行われるようになってきました。進行がんに対しては今でも従来の開腹手術が標準的な方法となります。

 術後=手術で完全にがんを取り切っても再発のリスクが高い場合、またはがんを取り切れなかった場合は、術後に抗がん剤治療をする場合があります。

 (3)抗がん剤治療

 他の臓器などに転移していたり、がんが周囲の臓器に直接浸潤していたりして手術でがんをとりきることが難しい場合は抗がん剤治療となります。抗がん剤は、複数の種類があり、どのような順番でどのような薬を使うかはガイドラインに定められています。ノーベル賞で話題になった本庶佑(ほんじょたすく)先生のオプジーボ(免疫療法の一種)も胃がんに有効な抗がん剤として認可されています。

 胃がんと診断されれば上記のような治療を受けることとなります。早期胃がんで発見できれば90%以上の方が治療でがんを克服することができます。何よりも、早期発見が重要で、定期的な胃カメラの検査をお勧めします。当院では、内視鏡の専門医、外科の専門医、抗がん剤治療専門の薬剤師が連携して、それぞれの患者さまに適した治療法を検討しています。

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 天和会松田病院(086―422―3550)。連載は今回で終わりです。

 まつだ・たつお 慶應義塾大学医学部卒。慶應義塾大学病院、がん研有明病院で腹腔鏡手術の修練を積み、米国シカゴ大学への留学を経て2018年岡山大学病院に赴任。2年間岡山大学病院で肝胆膵外科診療を中心に従事し、20年より現職。消化器外科専門医、消化器内視鏡専門医。

(2021年01月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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