口腔がん連携治療 岡山大病院 耳鼻咽喉科、形成再建外科、口腔外科

口腔がん手術を3科合同で行う岡山大病院のチーム(岡山大病院提供)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)の耳鼻咽喉(いんこう)科、形成再建外科、口腔(こうくう)外科(再建系)の3科が、舌がんや歯肉がんなど口腔がんで合同治療を進めている。切除したあごをきれいに復元したり、かみ合わせを良くして食事しやすくするなど患者のQOL(生活の質)向上が目的。口腔がんは医科の耳鼻咽喉科と歯科の口腔外科の「境界」だが、各科がそれぞれ手がけることが多く、連携した治療は全国でも珍しいという。

 3科での治療は、形成再建外科の木股敬裕教授の呼びかけで2006年から開始。現在46例。主に耳鼻咽喉科ががんの手術、形成再建外科が粘膜やあごなどの再建、口腔外科が早期がん治療とあごのかみ合わせ調整などで役割分担している。

 口腔がんは、のどの奧など広範囲に病巣が広がると耳鼻咽喉科でないと対応できない。切除後のあごを再建するため脚の骨や皮膚を移植するには形成再建外科の血管縫合などの高度な技術が必要。切除後、あごの骨の代わりとなる人工プレートをあてたり、食事のための適切なかみ合わせ、人工歯根を埋め込むインプラントは口腔外科が担う。

 「それぞれの専門家が集まることで最善の治療ができる」と木股教授。耳鼻咽喉科の小野田友男助教も「あごの復元などに安心感があるので広範囲にがんを切除でき、再発率も下がる。進行した口腔がんの治癒率は一般に50070%と言われるが、岡山大は83%」とメリットを強調する。

 昨年7月、下あごの3分の1を切除し、チタンのプレートをあてた倉敷市の男性(69)は「切除範囲が広いので不安だったが、奥歯などを細かく調整してくれたので、すじ肉のような特にかみづらいもの以外は普通に食べられる」と話す。

 口腔がん治療では、放射線で唾液(だえき)腺の機能が落ちて虫歯になりやすくなるなど歯独特の「有害事象」も起きうる。口腔外科の水川展吉講師は「歯科医だとあらかじめフッ素を塗布するなどして有害事象を予防できる。連携をさらに強化して、患者さんのための治療を追求していきたい」と話している。

(2010年12月02日 更新)

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