抗がん剤 腹腔内投与で再発率低下 卵巣がん治療 岡山大院教授ら研究

長尾昌二教授

 岡山大学術研究院医歯薬学域の長尾昌二教授(婦人科腫瘍学)らの研究グループは、卵巣がんの患者に対し、通常は静脈に点滴する抗がん剤「カルボプラチン」を腹腔(ふくくう)内に直接投与すると再発リスクが下がることを明らかにした。根治に向けた新たな治療法として、来年度中の公的医療保険の適用を目指す。

 卵巣がんは自覚症状に乏しく、有効な検診方法もないため、腹腔内にがんが広がった状態で見つかるケースが多く、女性特有のがんでは最も死亡率が高い。現在は切除手術の前後に抗がん剤を静脈に点滴するのが一般的な治療とされ、腹腔内への投与は腎臓への負担が大きかったり、腹腔内感染を引き起こしたりする懸念から行われていなかったという。

 長尾教授らは、比較的副作用の少ないカルボプラチンに着目。直接腫瘍に触れると効果が上がるのではないかと推測し、点滴専用入り口(ポート)とカテーテルを腹部の皮下に埋め込んで投与する方法を考え、臨床試験を実施した。

 2010~16年、手術を終えた進行がんの患者655人を対象に、腹腔内と静脈点滴のグループに分けて投与。経過を追ったところ、がん発見から1年たった時点の再発率(約20%)に差はなかったが、徐々に腹腔内投与の方が低くなり、5年経過時点で点滴した患者の約80%が再発したのに対し、腹腔内は約70%にとどまった。腹痛といった副作用も想定の半数以下の約10%だった。

 長尾教授は「腹腔内投与で効果が上がるとはっきり分かる結果だった。一人でも多くの人の命を救えるよう、この治療法を早く一般に届けたい」と話している。

(2023年08月09日 更新)

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