男性乳がん 知識深めて 岡山大病院の枝園診療科長に聞く

男性に乳がんの自己チェックを呼びかける枝園診療科長

 歌手のブラザー・コーンさん(67)が、自身のSNS(交流サイト)で乳がんを発症したと8月末に公表し、男性の乳がんがクローズアップされている。岡山県によると、県内でも2019年までの5年間で48人が罹患(りかん)。女性(6608人)の1%にも満たないが、知識不足のために進行して見つかるケースが多いという。岡山大病院(岡山市)の乳腺・内分泌外科の枝園忠彦診療科長は、自己チェックの大切さを訴える。

 全国では年間に約10万人の女性が乳がんを発症するのに対し、男性は700人ほどで、10万人に1人の割合だ。女性の罹患ピークは50代だが、男性は70代と高齢者に多い。男女でがんの特性や治療に違いはなく、2センチ以下で転移がない早期段階で見つけられると根治する可能性は高い。

 ただ、患者数が少ないため認知度が低く、「乳がんになるはずがない」と思うことで発見が遅れ、リンパに転移するなど進行して見つかることが多い。さらに男性は脂肪が薄く、皮膚や深部の筋肉へ浸潤しやすい。

 一般的に男性の乳がん検診は行われていないが、女性よりも乳房の膨らみがないため自己チェックがしやすい。がんは硬く、意識して触れば小さくても気付ける。乳腺が発達していないことから乳頭の下にできることが大半。乳頭の陥没や周辺の皮膚のただれ、血が混じった分泌物が下着に付く場合も乳腺外科を受診してほしい。

 男性は遺伝が原因となるタイプが多い。近親者に乳がんの患者がいると注意が必要だ。具体的には、親の遺伝子に変異があれば、子どもには男女差なく2分の1の確率で受け継がれ、変異がない人に比べて発症リスクが高くなる。

 遺伝ではないタイプもあり、誰が発症しても不思議ではない。早期発見のため、多くの人に知識を深めてもらいたい。

(2023年09月11日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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