(6)肺がん 倉敷中央病院呼吸器内科部長 横山俊秀

横山俊秀氏

 日本では高齢化に伴い、およそ2人に1人が一生のうちにがんと診断されると言われています。その中で肺がんは死亡者の最も多い難治性のがんとなっています。

 肺がんは早期には症状が見られないことが多く、進行してから症状が現れる場合があります。そのため予防や検診が重要です。症状としては咳(せき)や痰(たん)、血痰、胸痛、動いた後の息苦しさ、発熱などがあります。

 喫煙は肺がんの危険因子の一つであり、喫煙の量が多いほど、また喫煙を始めた年齢が若いほど危険性が高くなるとされています。受動喫煙(周囲のたばこの煙を吸うこと)も影響があり得ます。喫煙している方も禁煙によりがんになるリスクを下げることができるとされ、ぜひ禁煙にチャレンジしてください。

 40歳以上の方には1年に1回の肺がん検診が勧められており、市町村で案内されています。新型コロナウイルス感染症の流行によって2020年の検診受診者が減少し、がんの診断・手術を受けた方の数も減少したとされています。21年には回復傾向となったものの流行前の水準には回復していません。検診施設や医療機関では感染症対策がなされていますので、定期的に検診を受けられることをお勧めします。

 肺がんに対しての治療は、薬物療法(化学療法)、手術、放射線が3本柱とされており、病期(ステージ)や全身状態などによって治療を決定します。近年、集学的治療といって治療を組み合わせて行うことが重要になってきました。当院では定期的に呼吸器内科・呼吸器外科と放射線治療科がカンファレンスで相談を行い緊密に連携して、患者さんごとに最善の治療を検討しています。

 呼吸器内科が担当する肺がんの薬物療法については、従来の抗がん剤に加えて分子標的治療薬、免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)があり、年々新たな薬剤が開発されています。肺がんの細胞・組織をしっかり調べた上で、一人一人の患者さんに勧められる治療法を検討します。治療については効果だけでなく副作用などにも注意して相談します。

 できるだけ早期に、全身状態が良いうちにがんを見つける方が治療の効果を期待できます。気になる症状が続く場合は医療機関を受診して、検査を受けるようにしてください。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 よこやま・としひで 京都大学医学部卒。倉敷中央病院初期・後期研修医、国立病院機構姫路医療センターを経て、2014年から倉敷中央病院勤務、20年から呼吸器内科部長。日本内科学会専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医。

(2023年09月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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