(5)肺がんの薬物療法とチーム医療 岡山赤十字病院呼吸器内科医長 狩野裕久

リクライニングチェアなどで治療を受けられる外来化学療法センター

狩野裕久氏

 肺がんの治療は決して、患者さんと主治医だけで行うものではありません。特に肺がんの薬物治療は長期間にわたるため、さまざまな医療スタッフのサポートが必要になります。ここでは肺がんの薬物治療を支える岡山赤十字病院のチーム医療体制を紹介したいと思います。

 (1)外来化学療法センター

 多くの薬物治療は初回を入院で行い、以降は外来で継続していくことになります。点滴治療は30分以内で終わるものから5時間以上かかるものもあるため、患者さんには安全かつ快適に治療を受けていただく必要があります。当院の外来化学療法センターでは、リラックスした環境がつくれるよう、個別のリクライニングチェアなどで治療を受けていただいています。

 また、治療中に薬剤師や看護師が副作用や生活での困りごとなどをお聞きし、主治医と相談して対応できるようにしています。

 (2)緩和ケアチーム

 緩和ケアは痛みに対してモルヒネを使うことだけではありません。患者さんの体の痛みのみならず、息苦しさや不安、治療による副作用などを和らげること、そして社会的な問題も解決できるように一緒になって考えることも含まれます。われわれ医療スタッフは患者さんが「がん」と診断されたその時から、必要な緩和ケアが提供できるようにトレーニングを受けています。

 しかし、時にはより専門的な知識を持った医師・薬剤師・看護師・心理士などからなる緩和ケアチームのサポートが必要になる場面もあります。当院でも緩和ケアチームと連携しながら、患者さんの苦痛が一つでも取り除けるように対応しています。

 (3)患者サポートセンター

 近年、肺がんに対する新しい薬が次々と開発され、使用できるようになりましたが、いずれも高額です。そのため、多くの患者さんが高額療養費制度を利用して、治療をしていくことになります。また患者さんの状況によっては、要介護認定や身体障害者の認定が必要な場面もありますが、書類準備や申請はけっして簡単ではありません。

 当院では患者サポートセンターで、社会福祉士(メディカルソーシャルワーカー)や看護師が患者さんそれぞれの状況に応じた説明や支援を行い、治療生活を安心して送れるようにサポートしています。

 チーム医療のメンバーには治療を受けられる患者さんご本人とご家族も含まれます。岡山赤十字病院では今回紹介したようなチーム医療体制を基に、肺がん治療の目的・目標を明確にして、治療が円滑に、そして安全に進められるようにサポートしていきます。

 ◇

 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 かのう・ひろひさ 岡山大学医学部・同大学院卒。大垣市民病院(岐阜)、岡山大学病院を経て2020年から岡山赤十字病院勤務。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会専門医。

(2023年09月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP