高齢者に多い皮膚がんについて 川崎医科大学付属病院皮膚科・田中了准教授に聞く

田中了准教授

 11月12日は語呂合わせにちなむ「いい皮膚の日」。皮膚に関する正しい知識や病気の予防法を知ってもらおうと、日本臨床皮膚科医会は啓発活動に毎年取り組んでいる。高齢者に多い皮膚がんについて、川崎医科大学付属病院皮膚科の田中了准教授に話してもらった。

 皮膚には盛り上がるできものがよくできます。多くは虫刺されのように、塗り薬で治ります。塗り薬で治らないいわゆる腫瘍と呼ばれるものでも、良性が圧倒的に多いです。老人性いぼと呼ばれる脂漏性角化症は顔面によく見られます。また、色素性母斑と呼ばれる普通のほくろも、生まれつきのものも含めて、誰にでも全身のどこかに少なくとも一つはあることが多いです。

 これらは全く問題はありません。それでは皮膚がんにはどういったものがあるのでしょうか。

 よく知られているものでは、まず足の裏にできることが多い悪性黒色腫(メラノーマ)が挙げられます。最初は黒色から褐色の色素斑として気付きます。早期のごく小さいうちは普通のほくろとほとんど区別が付きません。大きくなって、「形が左右対称ではない」「色むらがある」「大きさが6ミリ以上」「短い期間で大きくなる」という特徴がある場合はメラノーマが疑われます。

 一般的に皮膚がんは高齢者に多いのですが、メラノーマは患者の平均年齢が64歳と比較的若く、20代で罹患(りかん)することもあります。

 日本人で最も罹患しやすいのは基底細胞がんです。人口10万人当たり3~4人ほどが発症します。顔にできることが多く、光沢のあるてかてかした黒いほくろのようなできものであることが多いです。

 また、顔にできやすい有棘(ゆうきょく)細胞がんは、早期ではかゆみのない赤み、小さなしこりができる程度で、ほとんどは症状が見られません。しかし時間がたつにつれ増大し、表面のがさがさが強くなったり、汁が出たり、出血したりします。内臓に転移することもあり、数カ月~1年で倍以上の大きさとなる場合は注意が必要です。そのほか、頭や顔にできやすい血管肉腫、メルケル細胞がん、体幹部にできる隆起性皮膚線維肉腫、外陰部にできる乳房外パジェット病などがあります。

 皮膚がんの原因としてよく知られているのが日光(紫外線)です。有棘細胞がん、その前段階の日光角化症、基底細胞がん、悪性黒色腫などで関連性が指摘されています。やけどの跡にできることもあります。

 皮膚がんが進行すれば、痛みや出血を伴います。治療は切除を最優先に行います。病巣を完全に切除できない場合は化学療法や放射線療法を選択します。

 予防には紫外線を避ける、日焼け止めを塗るなどの遮光対策が最も効果的であり、一年中、気を配るべきです。皮膚がんは早期に治療すれば予後は良好で、内蔵のがんと比べて5年生存率も高いです。入浴や着替えの時に、全身を観察することを習慣にしてはどうでしょうか。気になるしみやできものがあれば、ぜひお近くの皮膚科へご相談ください。

 たなか・りょう 岡山大学医学部卒。岡山大学大学院、米・ジョンウェインがん研究所、静岡県立静岡がんセンターを経て2013年4月から川崎医科大学皮膚科に勤務。19年から准教授。日本皮膚科学会皮膚科専門医・皮膚悪性腫瘍指導専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

乾燥を伴う病気の克服について講演 23日岡山、県皮膚科医会

 岡山県皮膚科医会などは23日正午~午後1時、「いい皮膚の日」にちなむ市民公開講座を県医師会館三木記念ホール(岡山市北区駅元町)で開く。

 海部医院(高松市)の池田政身医師が「皮膚の乾燥を伴いかゆくなる病気を克服しよう―スキンケアの重要性」と題して講演する。無料。定員300人で申し込みは不要。また、講演に先立ち、午前11時15分から無料相談を受け付ける。定員は先着30人。

 問い合わせは日本臨床皮膚科医会岡山県支部(090―5707―3271)で、平日の午前9時~午後5時に対応する。

(2023年11月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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