(1)新型コロナウイルス感染症 流行時の高齢者の対応と過ごし方 倉敷スイートホスピタル院長 松木道裕

松木道裕氏

 新型コロナウイルス感染症が発生して3年半が過ぎ、今年の5月には感染法上の位置づけが2類相当感染症から5類感染症に類型変更されました。ウイルスの変異により弱毒化したこと、多くの方にワクチン接種が行われたことなどにより、重症化する患者は減ってきています。とはいえ、高齢者や基礎疾患をお持ちの方は若年者に比べ重症化リスクは高いことから、流行時には感染予防を十分に行う必要があります。ウイルスは弱毒化したものの感染力は逆に強くなっていることを忘れてはなりません。

 高齢者など重症化リスクの高い方は、最新のワクチン接種状態を維持することが大切です。今年9月20日から始まったXBB・1・5対応ワクチンは、現在拡大しているEG・5系統株やこれから拡大する可能性があるBA・2・86株ウイルスに対しても十分効果が期待できると考えられています。再接種することで体内にできる中和抗体(ウイルスから感染予防効果を持つ)の量は10倍前後増えます。この感染予防効果と発症予防効果は、接種後、比較的早い時期に減弱していきますが、重症化予防効果については、長い期間、持続すると考えられています。

 日常生活の中で感染を予防するためにはマスクの着用と手指の消毒が効果的です。感染症を起こす病原体などは、飛沫感染に加え、手を介して、口、鼻、目の粘膜から体内に入ります。

 個室などではマスクを外して過ごすことはできますが、利用者の多い場所、出入りの多い病院や高齢者施設では、ウイルスを持ち込まず、感染を受けないためにマスクの着用は必要です。マスクはサージカルマスクを着用することをお勧めします。また、外出から帰ってきたとき、食事を取るときには手洗いを行うことを習慣づけましょう。

 感染を早く察知することで重症化を防ぐことができます。いつもと比べ活気がない、食べる量が少ない、せきや鼻水がみられる、頭痛や咽頭痛を訴える、いつもできることができなくなるなどの症状があった時には、かかりつけの先生に相談してください。いつもと違う小さな変化に周囲が気づくことが大切です。

 地域に感染が拡大する流行期には、介護サービスの縮小などが起こってきます。代わりになるサービスができる施設を探したり、場合によってはご家族が介護を担うこともあるでしょう。そうした場合に備え、あらかじめケアマネジャーと相談しておく必要があります。

 また、ご家族内でも介護に携わる手順、役割などを話し合っておくと、いざという時にスムーズに対応ができます。

 新型コロナウイルス感染症の流行によって、高齢者の身体活動、社会活動、健康観などの低下がみられ、要介護リスクは高まっています。流行期には、高齢者の大切な日常生活や生命を守るために、ご家族、医療・介護者、そして社会による、さらなる支援が必要であると思われます。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 まつき・みちひろ 川崎医科大学卒。川崎医科大学大学院修了。同大学講師、准教授、川崎医療福祉大学教授を経て2012年から現職。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。

(2023年11月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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