手の汗の治療 倉敷成人病センター・奥村特任副院長に聞く 呼吸器外科手術で治まる 塗り薬や注射、効果には個人差

手の汗の診察をする奥村特任副院長

 手から滴るほどの汗をかく疾患を「手掌多汗(しゅしょうたかん)症」という。塗り薬や注射が治療の第1選択となるが、改善しない場合は、呼吸器外科の出番だ。胸部の交感神経を切除すると手術直後から汗がぴたっと止まる。倉敷成人病センターの奥村典仁特任副院長・呼吸器外科主任部長に、原因や症状、治療について聞いた。

 手のひらにたくさん汗をかくのは、胸部の交感神経の活動性が異常に高まることが原因です。交感神経は脳から背骨の両側に沿って尾骨まで下りている直径1ミリほどの神経を指します。幼少期から思春期にかけての発症が多く、何年も悩んだ末に成人後に受診する人もいます。患者は19人に1人いるとされます。

 症状がひどいと、試験の時に答案用紙が手に張り付いてふやけて破れる、手が滑って答案が書けない、パソコンのキーボードを打てない、手袋を着けられないなど、勉強や仕事に支障を来します。

 治療を皮膚科で行う場合は、塩化アルミニウムなどの外用薬を塗ったり、ボツリヌス菌毒素を注射したりします。今年6月に国内で初めて保険適用の塗り薬のオキシブチニン塩酸塩が登場しました。これらは症状を抑えることが目的であり、治療期間が長くなり、また効果は個人差があります。このため、最終的に手術を選択される方が多いです。確実に疾患を治せるのが手術のメリットです。

 手術は細径胸腔(きょうくう)鏡下で行います。脇の下の2、3カ所に直径3~5ミリの穴を開けて、胸腔鏡を入れて胸椎と呼ばれる背骨の頭側から3番目の高さにある神経幹を切除します。全身麻酔で行い、手術時間は両手で1時間半程度です。入院期間は1泊2日もしくは2泊3日を要します。術後の痛みは非常に軽く、傷跡はほとんど目立ちません。

 手術によって手の汗は極端に減りますが、代わりに背中や胸、太ももなどに汗をかきやすくなることを理解しておいてください。私自身は治療方法を説明しますが、手術を勧めることはせず、あくまで患者さん自身に決定してもらっています。発育とともに改善することもあるので、小学生以下には手術は行いません。

 おくむら・のりひと 山口大学医学部卒、京都大学大学院医学研究科修了。米国マサチューセッツ総合病院、倉敷中央病院呼吸器外科主任部長などを経て、2022年8月から倉敷成人病センターに勤務。日本呼吸器外科学会ロボット支援手術プロクター、日本呼吸器外科学会指導医・胸腔鏡安全技術認定医、日本外科学会専門医、日本胸部外科学会指導医、日本呼吸器学会指導医など。

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 倉敷成人病センターのYouTubeチャンネルに紹介動画あり
https://youtube.com/shorts/e1Jle8HwGu8
https://www.youtube.com/watch?v=oPobCrDszHU

(2023年12月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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