小児がん患者 将来の不安解消に 家族らが未来手帳 治療法や薬記す

小児がんなどの経験者が晩期合併症を予防できるよう作製している未来手帳

 小児がんを経験した岡山県内の子どもと家族ら約30組で組織する「あゆみの会」が、治療後の子どもに役立つ「未来手帳」を作製している。子どもたちは病気が治っても定期的なフォローアップの必要がある。自分の治療法や薬を明記し理解しておくことで、成長過程で発症の可能性がある晩期合併症の予防を図り、学校など周囲の協力を得て将来の不安解消につなげたい考えだ。

 小児がん経験者は病後も薬物療法、放射線治療などの影響から、がんそのものに加えて成長・発達の遅れ、神経や臓器の異常、生活習慣病になりやすいといった晩期合併症の心配がつきまとう。そのことが原因で、退院後の教育や就職、結婚、出産など人生のさまざまな場面で課題に直面するという。

 子どもや家族は治療後に医療機関からフォローアップ手帳などを受け取るが、医師向けの専門的な内容で、復学先の教師ら一般的な人には難解だった。

 会では「子どもたちに将来を不安なく過ごしてほしい」との母親の声から手帳の準備を開始。A5判ほどのファイル形式で、それぞれの子どもに宛てたオーダーメードとする。使用した薬剤や放射線療法と晩期合併症の関係、予防するための注意点などを記す。相談先のホームページアドレスや2次元コードも載せ、情報の更新に対応する。

 会には晩期合併症を理解するのが難しい幼い子どももおり、会員らは「成人になったら渡したい」「手帳を見せながら合併症について一緒に勉強したい」などと話していた。6月に試作品を作り、改良して年末までに完成させる。

 子どもたちに生活習慣病予防の食育指導を続け、手帳作製を手助けする就実大教育学部の森口清美准教授は「成長した子どもたちには自己管理能力を身に付けてほしい。手帳が支援ツールのモデルになれば」と期待していた。

(2024年01月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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