冬の脱水症状にご用心 水分補給し十分加湿を

談笑しながら飲み物で水分補給するお年寄り

 体内から水分や塩分が失われ、生命に危険を及ぼすこともある脱水症状。熱中症が問題になる夏場だけでなく、空気が乾燥する冬場にも起きやすい。特に、身体機能が衰えている高齢者は要注意。専門家は「こまめな水分補給や室内の加湿で予防に努めてほしい」と助言する。

 脱水症状は、体の中の水分と、細胞や臓器の機能維持に必要な電解質(ナトリウムやカリウムなど)が不足した状態。食欲不振、頭痛や吐き気、脚のつり、脱力などの症状がある。血液(血漿(しょう))の量が減ると、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞といった重大な疾患につながることもある。

 岡山大大学院保健学研究科の西田真寿美教授(老年看護学)は、「脱水症状は夏、冬のどちらも注意が必要」と指摘する。冬に増える原因には、空気の乾燥と水分摂取量の減少があるという。

 高温多湿の夏に比べ、冬は空気が乾く。特に高気密の現代家屋では、暖房器具を使うことでさらに乾燥が進む。湿度が下がればそれだけ、皮膚を通して出て行く水分量も増えることになる。

 気温が低いため、のどの渇きを感じにくく、水を飲む量が少なくなるのも問題だ。冷えてトイレも近くなるため、お年寄りはなおさら水分摂取を控えがちになるという。

 インフルエンザ、ノロウイルスなど冬に増える感染症も、脱水症状を誘発する。「発熱や嘔吐(おうと)、下痢などがあれば、それだけリスクは高くなる」

 予防のポイントは、加湿とこまめな水分補給。加湿器を使ったり、エアコンを弱くして電気カーペットなど他の暖房器具を併用したりすれば、乾燥はかなり緩和できる。また、起床時、食事時、午前午後のティータイム、風呂上がり、就寝前など、水分を摂取する習慣を付けるとよい。電解質が成分調整された経口補水液が、ドラッグショップなどで入手できる。

 75歳の人の体内の水分の量は約50%。25歳の人(約60%)と比較すると10%ほど低い。「お年寄りはそれだけ、脱水症状を起こしやすいんですね」と西田教授は強調する。

 皮膚のかさつきや口の中のねばねば感、わきの下の乾燥などに気付いたら要注意。「一番大切なのは、本人も周りの人も冬の脱水症状のリスクを認識すること。暮らしの中で意識的に、加湿と水分補給に努めるようにしてほしい」

 大勢のお年寄りが生活する、高齢者福祉施設の現場では、どのような対策に取り組んでいるのだろうか。岡山市南区浦安本町の特別養護老人ホーム・愛光苑を訪ねた。

 「さあ、みなさん、お茶にしましょう」。ホールでくつろいだり、談笑するお年寄りに、施設職員が声を掛ける。

 1人1人の健康状態を確かめながら、お汁粉、甘酒、ショウガ湯、お茶など、好みの飲み物が入ったカップを手渡す。「冬はついつい飲むのを忘れることもある。でもこうして、決まった時間に出してもらえると助かります」。97歳の女性は笑顔を見せる。トイレの頻度を心配し、飲むのを敬遠する人のことも考え、温かいものを出すようにする。

 同施設では、午前10時と午後3時にティータイムを設け、約100人の利用者が、一斉に飲み物を口にする。筒井恵子施設長は「ちょうど食事と食事の間の時間に摂取できるようにすれば、水分不足を予防できる」と説明する。1人1日1300〜1500ミリリットルを目安に、こまめな給水を心掛けている。

 空気の乾燥を防ぐため、各部屋に加湿器を置き、一日3回湿度を測る。屋内の湿度は一日を通して、ほぼ50%前後に保つ。

 筒井施設長は「水分の不足や乾燥は、脱水症状だけでなく、便秘や皮膚病の原因にもなる。冬は感染症予防と並んで気をつけている」と話している。

(2014年01月07日 更新)

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