徹夜本 川崎医科大泌尿器科学教授 永井敦

 昔から乱読してきました。「徹夜本」と言えるものが何冊かあります。鈴木光司の「リング」がその一つ。ホラーでとても怖いのですが、読み始めるとやめられません。

 私は、読んだ本の内容をしばらくすると忘れてしまうタイプなので、何度でも同じ本を楽しむことができます。「リング」も3回目を読んでいた時のことです。

 その日、私は月一で担当する病院で勤務していました。大雨で外来患者さんもほとんどなく、診察室で「リング」を読みふけっていました。怖さのあまり、時々背後に誰か立っていないか振り返るほどです。

 突然、「先生、大丈夫ですか!」の声。思わず飛び上がってしまいました。振り返ると、看護師さんがドアからのぞいています。その時になって初めて、自分の足元が冷たいことに気づきました。ハッとして見ると、床が水浸しで、足首まで水没しそうになっていました。床上浸水しているのに、部屋から出てこない私を心配した看護師さんが駆けつけたというわけです。浸水が始まった時に結構騒ぎになったらしいのですが、「リング」に没頭しすぎて全く気付きませんでした。そのくらい夢中になる本が「徹夜本」です。

 人生を何度もやり直すグリムウッドの「リプレイ」は4回読みました。私もやり直せるのだったら、結婚という選択はないかも…。カミさんも読んでいるので、同じことを思っているでしょう。

 無性に讃岐うどんが食べたくなったり、ベートーベンが聞きたくなったりする村上春樹の「海辺のカフカ」も徹夜本。SF作、ホーガンの「星を継ぐもの」は、人類の起源に思いをはせ、装丁がぼろぼろになるまで読み返し、アマゾンで再注文したほどです。

 徹夜で読んでしまう本の数々でした。

(2015年08月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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