ダニ媒介性感染症 冬場も注意を 岡山県環境保健センター所長に聞く

感染症を媒介するマダニ(岡山県環境保健センター提供)

岸本寿男所長

 岡山県内をはじめ各地の野山に生息する吸血性のダニに刺されて発症する「ダニ媒介性感染症」は、気温が低下するこれからの季節も油断できない。冬場に活動を活発化させるダニがいるためだ。重症化して死亡するケースが全国で後を絶たず、県内でも2013年に犠牲者が出た同感染症について、県環境保健センターの岸本寿男所長(感染症学)に予防策や治療法を聞いた。

 ―ダニに関係する主な感染症と症状は。

 マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱、ダニの一種ツツガムシの幼虫によるツツガムシ病などがある。いずれもダニ自体がウイルスや細菌を保有し、刺されて感染すると考えられている。体長はマダニで1~4ミリと、刺されても痛みやかゆみはほとんどなく、気付かないケースが多い。症状は39~40度の発熱や倦怠(けんたい)感、刺し口が共通してある。SFTSの場合、食欲低下や下痢、嘔吐(おうと)を伴うこともある。

 ―秋以降にも注意すべき理由は。

 マダニについては県が13年8月から約1年間、県内7地点で捕獲調査を毎月行った。「ヒゲナガチマダニ」と呼ばれるタイプは10月以降に捕獲数が急増し、2月にピークを迎えた。ツツガムシは秋から初冬にふ化し、幼虫は0・1~3%が細菌を保有するといわれる。こうした状況を踏まえれば、冬場もやはり安心はできない。

 ―どんな治療法があるのか。

 ツツガムシ病と日本紅斑熱は適切な抗菌薬の使用で重症化が防げるが、SFTSは治療薬がなく、対症療法が中心となる。東北地方では以前、ツツガムシ病にかかった患者を、医師がSFTSを想定したことで抗菌薬の投与が遅れ、死亡した例がある。流行地で感染した患者が別の地域で受診することもあり、医師はあらゆるケースを考慮すべきだ。

 ―県内の患者の発生状況と予防策を聞かせてほしい。

 14年までの10年間で県内ではツツガムシ病は14人、09年に初めて発生した日本紅斑熱は11人が確認され、SFTSは13、14年で4人が発病し、うち1人が死亡した。草むらに入る際は袖口を縛れる長袖、長ズボンの着用が望ましい。地面に寝転んだり腰を下ろしたりすることは避け、山林や草むらに立ち入った場合は帰宅時にすぐ入浴し、新しい服に着替えるなど自衛策を講じてほしい。

 きしもと・としお 川崎医科大大学院呼吸器病態生理学修了。同大付属病院呼吸器内科講師、国立感染症研究所ウイルス第一部リケッチア・クラミジア室長などを経て、2009年より現職。61歳。

(2015年11月14日 更新)

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