済生の心基盤に高度医療をより充実 岡山済生会総合病院(岡山市北区国体町) 山本和秀院長
―開院した新病院の狙いは。
山本 目的の一つは東南海・南海地震など災害への対応です。在来施設には築約40年を経て耐震性が不十分な部分もありましたから。しかし、もちろん急性期病院としての救急や入院機能の一段の強化が建設の大目的です。
―入院と外来を分ける入外分離方式になりましたね。
山本 3棟に分かれていた入院機能を新病院に集約しました。入外分離で少し不便な面もあるかもしれませんが、新鋭機器の導入など設備の充実が容易になり、患者のメリットは大きいはず。入院面では553床の半分を個室化しました。
―救急機能の充実はめざましいですね。
山本 救急センターを従来の3倍に広げ、五つの処置室を設置。CTやMRIを近くに配置して必要な画像検査をすぐに受けられるようにしました。また血管内治療などを行うIVR治療室を設けています。救急病室8床を処置室の隣に配置し、ICU(集中治療室)は10床。これと別にHCU(高度治療室)16床を新設しました。救急を受ける体制は大きく向上したと思います。
―高齢化もあって病気で言えば脳梗塞や心筋梗塞が増えています。救急の充実は心強いですね。
山本 従来、当院は循環器の分野が若干弱かったのですが、この強化を図ります。今春には循環器の専門医を増員予定で、しっかりしたチーム医療により、心臓のカテーテル治療などにも積極的に取り組んでいこうと思っています。
―岡山で済生会病院と言えば、がん診療で有名ですが。
山本 はい。特に消化器系には自信を持っています。今回、手術室を増やして計12室とし、手術用の3D内視鏡を導入するなど医療機器も一層充実させました。がん治療に威力を発揮してくれるはずです。消化器、肺、乳がんなど、それぞれチームで診療に取り組んでおり、充実したスタッフと設備により、引き続きがん治療を頑張ってやっていくつもりです。
―ところで、最初に言われた災害に対する施設の強靱(きょうじん)化は?
山本 新病院の建物は免震構造とし、岡山市の中心部とはいえ水害も想定して盛り土で地盤をかさ上げしました。当院は災害拠点病院の一つであり、新病院の完成で名実ともにそれにふさわしい施設になったと思います。屋上にはヘリポートも備えています。
―従来の本館は付属外来センターになりましたね。
山本 はい。外来はかかりつけ医からの紹介患者や、専門診療を要する患者中心でやっていきます。軽症患者は診療所で、大きな病院では専門診療を、というのが厚生労働省の方針でもあるのですが、医療資源の効率活用の点から、地域住民にとっても有益なことと思います。
―従来の伊福町の本館では日帰り手術にも力を入れると聞きました。
山本 眼科や手といった分野ですね。日帰り手術センター(手術室3室)を秋ごろ開設する予定です。
―先ほど言われたかかりつけ医との連携ですが、国が進める地域包括ケアの観点からも連携は意義がありますね。
山本 ええ。地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で、医療や福祉サービスをトータルで適切に提供する仕組みのことです。そこから先ほど言った診療所と大きな病院の分業の考え方も出てくるんですが、一方で例えば患者が急変すれば、迅速に大きな病院で診療を受ける必要がある。つまり、地域の診療所とわれわれは役割分担しつつ連携しなければならない。急性期をわれわれが受け持ち、その後は診療所の先生のもとで回復・安定期を過ごしてもらうわけです。
―病診連携ですね。
山本 そう。だからかかりつけ医からの紹介というのが大きい。私たちは、いざという時の“安全装置”の役割を果たせればいいと思っています。
―福祉の分野を考えれば、済生会としては特別養護老人ホームなどももち、地域包括ケアに先進的に取り組めそうですね。
山本 そうですね。済生会は明治天皇のお考えに基づき、医療や福祉に恵まれない人に手をさしのべることを目的に設立されました。社会福祉法人であり、その意味では地域包括ケアの推進にふさわしいかもしれません。予防・医療・福祉の推進を理念としています。
―予防というのも現代社会にあって、重要な分野ですね。
山本 従来の施設の一部を建て替えて岡山市北区奉還町の健診センターを移転させます。病気の予防、早期発見に一層力を入れていきます。
―最後に、新病院での診療スタートに際して、抱負をあらためて。
山本 「医療や福祉に恵まれない人のために」という済生の心が職員の意識にしっかり根付いていることを、折に触れて感じます。今後もこの済生の心を基盤に、地域の医療ニーズに沿って高度医療を展開していきたいと思います。
◇
新病院は、在来施設(岡山市北区伊福町)の北東約200メートルに移転した。2014年2月に着工し、鉄筋鉄骨コンクリート10階延べ約4万6700平方メートル。最上階には家族とゆっくり過ごせるスペースを併設した緩和ケア病棟を設置。4階の張り出し部には患者らを和ませる屋上庭園もある。総投資額は土地代を除き約180億円。
在来施設のうち、西館や立体駐車場は取り壊し、新しい施設を建設する。駐車場(1~7階)の上の8、9階が、同奉還町から移転する新たな健診センターとなる。完成は18年3月の予定。
◇ 岡山済生会総合病院(086―252―2211)
山本 目的の一つは東南海・南海地震など災害への対応です。在来施設には築約40年を経て耐震性が不十分な部分もありましたから。しかし、もちろん急性期病院としての救急や入院機能の一段の強化が建設の大目的です。
―入院と外来を分ける入外分離方式になりましたね。
山本 3棟に分かれていた入院機能を新病院に集約しました。入外分離で少し不便な面もあるかもしれませんが、新鋭機器の導入など設備の充実が容易になり、患者のメリットは大きいはず。入院面では553床の半分を個室化しました。
―救急機能の充実はめざましいですね。
山本 救急センターを従来の3倍に広げ、五つの処置室を設置。CTやMRIを近くに配置して必要な画像検査をすぐに受けられるようにしました。また血管内治療などを行うIVR治療室を設けています。救急病室8床を処置室の隣に配置し、ICU(集中治療室)は10床。これと別にHCU(高度治療室)16床を新設しました。救急を受ける体制は大きく向上したと思います。
―高齢化もあって病気で言えば脳梗塞や心筋梗塞が増えています。救急の充実は心強いですね。
山本 従来、当院は循環器の分野が若干弱かったのですが、この強化を図ります。今春には循環器の専門医を増員予定で、しっかりしたチーム医療により、心臓のカテーテル治療などにも積極的に取り組んでいこうと思っています。
―岡山で済生会病院と言えば、がん診療で有名ですが。
山本 はい。特に消化器系には自信を持っています。今回、手術室を増やして計12室とし、手術用の3D内視鏡を導入するなど医療機器も一層充実させました。がん治療に威力を発揮してくれるはずです。消化器、肺、乳がんなど、それぞれチームで診療に取り組んでおり、充実したスタッフと設備により、引き続きがん治療を頑張ってやっていくつもりです。
―ところで、最初に言われた災害に対する施設の強靱(きょうじん)化は?
山本 新病院の建物は免震構造とし、岡山市の中心部とはいえ水害も想定して盛り土で地盤をかさ上げしました。当院は災害拠点病院の一つであり、新病院の完成で名実ともにそれにふさわしい施設になったと思います。屋上にはヘリポートも備えています。
―従来の本館は付属外来センターになりましたね。
山本 はい。外来はかかりつけ医からの紹介患者や、専門診療を要する患者中心でやっていきます。軽症患者は診療所で、大きな病院では専門診療を、というのが厚生労働省の方針でもあるのですが、医療資源の効率活用の点から、地域住民にとっても有益なことと思います。
―従来の伊福町の本館では日帰り手術にも力を入れると聞きました。
山本 眼科や手といった分野ですね。日帰り手術センター(手術室3室)を秋ごろ開設する予定です。
―先ほど言われたかかりつけ医との連携ですが、国が進める地域包括ケアの観点からも連携は意義がありますね。
山本 ええ。地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で、医療や福祉サービスをトータルで適切に提供する仕組みのことです。そこから先ほど言った診療所と大きな病院の分業の考え方も出てくるんですが、一方で例えば患者が急変すれば、迅速に大きな病院で診療を受ける必要がある。つまり、地域の診療所とわれわれは役割分担しつつ連携しなければならない。急性期をわれわれが受け持ち、その後は診療所の先生のもとで回復・安定期を過ごしてもらうわけです。
―病診連携ですね。
山本 そう。だからかかりつけ医からの紹介というのが大きい。私たちは、いざという時の“安全装置”の役割を果たせればいいと思っています。
―福祉の分野を考えれば、済生会としては特別養護老人ホームなどももち、地域包括ケアに先進的に取り組めそうですね。
山本 そうですね。済生会は明治天皇のお考えに基づき、医療や福祉に恵まれない人に手をさしのべることを目的に設立されました。社会福祉法人であり、その意味では地域包括ケアの推進にふさわしいかもしれません。予防・医療・福祉の推進を理念としています。
―予防というのも現代社会にあって、重要な分野ですね。
山本 従来の施設の一部を建て替えて岡山市北区奉還町の健診センターを移転させます。病気の予防、早期発見に一層力を入れていきます。
―最後に、新病院での診療スタートに際して、抱負をあらためて。
山本 「医療や福祉に恵まれない人のために」という済生の心が職員の意識にしっかり根付いていることを、折に触れて感じます。今後もこの済生の心を基盤に、地域の医療ニーズに沿って高度医療を展開していきたいと思います。
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新病院は、在来施設(岡山市北区伊福町)の北東約200メートルに移転した。2014年2月に着工し、鉄筋鉄骨コンクリート10階延べ約4万6700平方メートル。最上階には家族とゆっくり過ごせるスペースを併設した緩和ケア病棟を設置。4階の張り出し部には患者らを和ませる屋上庭園もある。総投資額は土地代を除き約180億円。
在来施設のうち、西館や立体駐車場は取り壊し、新しい施設を建設する。駐車場(1~7階)の上の8、9階が、同奉還町から移転する新たな健診センターとなる。完成は18年3月の予定。
◇ 岡山済生会総合病院(086―252―2211)
(2016年01月18日 更新)
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