救急、高度専門医療、リハビリ柱に 川崎医科大学総合医療センター(岡山市北区中山下)川﨑誠治院長(学校法人川崎学園理事長)

川﨑誠治院長

12月1日に開院する川崎医科大学総合医療センター。地上15階、地下2階で、免震構造となっている。病床数は647床。屋上にドクターヘリなどが発着できるヘリポートを整備した。手前の「深柢ガーデン」は旧深柢小学校グラウンドを活用。地域の憩いの場として開放される

IVRセンターには最新の血管撮影装置4台を導入。患者の体への負担が少ない低侵襲性治療を行う

 ―新たな病院が完成し、川崎病院は最新の設備と医療機器を備えた「川崎医科大学総合医療センター」に生まれ変わります。12月1日の開院を控え、今のお気持ちは。

 川﨑 そもそも川崎病院は、川崎学園の創設者・川﨑祐宣が「病院は患者さんのためにある」との理念のもと、昭和13年に夜間診療所・昭和医院を開業し、翌14年に今の中山下の地に外科川﨑病院を開院したことに始まります。近年、建物の老朽化が進み、最新の医療ニーズに応えるには手狭になってきたということで建て替えが大きな課題となってくる中、1万人を超える地元の皆さまから、岡山市中心部に残って、安全安心の医療を提供してほしいという強い要望をいただきました。それがあったからこそ、この旧深柢小学校跡地に建設することができました。新病院でも「医療は患者さんのために」との理念を継承します。どのような疾病の患者さんでも受け入れ、最善の医療を提供したいとの思いから名称は「総合医療センター」としました。暮らしに安心をもたらす「救急医療」と「高度専門医療」、早期の社会復帰を図る「リハビリテーション」を3本柱に患者さん中心の質の高い医療を提供してまいります。

 ―新病院の特徴を教えてください。

 川﨑 川崎病院はもともと救急で発展してきました。救急エリアは従来の6倍に拡大し、状況に応じて専門医が対応します。急性期病院にとって一番の心臓部分は手術室であり、術後管理をするICU(集中治療室)です。救急搬送患者さんの動線、病棟からの患者さんの動線、外来からの動線を考えて、病棟と外来のちょうど真ん中にあたる7階に整備しました。同じ階にあるIVRセンターは、血管撮影装置を用いた画像下治療センターです。従来の胸やおなかを切る手術ではなく、心臓や脳などの疾患に対し、カテーテルを血管の中に入れてさまざまな治療を行います。このため患者さんの体への負担が少ないのが特徴です。例えば大動脈瘤(りゅう)では、カテーテルを使ってステントグラフト(人工血管)を入れて血管の破裂を防ぐというような、かなり難易度の高い処置もできる十分な体制が整ったと思っています。手術をすると、どうしても体への負担が重くなります。できるだけ患者さんの体に優しい治療を提供したいと考え、最新鋭の手術支援ロボット「ダ・ビンチ」を導入したのもそのためです。

 ―がんに対応する放射線治療センターも充実しました。

 川﨑 がんの治療については、手術、抗がん剤による薬物療法、そして放射線療法があります。今後、放射線治療はどんどん増えてくると思っています。新たに導入するリニアック(回転式放射線治療装置)は、精度の高い治療ができ、副作用も少ない最新機器です。がんの位置をCT(コンピューター断層撮影)などであらかじめ正確に把握してコンピューターで計算し、そこだけをピンポイントに狙います。今は3人に1人ががんで亡くなり、2人に1人ががんにかかる時代です。かなりスペースを広げた内視鏡センターでは、がんの早期発見、早期治療などに努めていきます。

 ―地域医療との連携はいかがでしょうか。

 川﨑 高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるようなサービスを提供する地域包括ケアシステムの構築が進む中、われわれの病院と開業医の先生方との間で役割を分担しながら進めていきたいと思います。併せて、看護部を中心として在宅療養支援センターを立ち上げています。当院の看護師が、在宅での療養生活を支援する地域の訪問看護ステーションに出向し、勉強をさせてもらっています。また、医療と介護の連携を強める「医介連携の会」を発足させ、介護施設の皆さんとの勉強会も定期的に開いています。加えて今後の課題ですが、在宅医療を支える上で、かかりつけ医の先生による診療が何らかの理由で難しい場合、われわれの病院がどんなバックアップができるのか―ということを考えています。普段から開業医の先生との連携がうまくいっていれば、こういうこともスムーズにいくと思います。

 ―12月1日に向けての抱負を聞かせてください。

 川﨑 規模が拡大した病院で最新の医療を提供するため、医師をはじめとする医療スタッフの充実に力を入れてきました。おかげさまで全国から同じ志を抱く各分野のスペシャリストが集まってくれ、準備は順調に進んでいます。新病院が完成し、これからがスタートです。応援していただいた地域の皆さまの信頼に応えられる病院の実現に向け、職員とともに頑張っていきたいと考えています。当院で働く教職員や学生たちには地域のイベントなどに積極的に参加して活性化の一翼を担ってもらい、若い人も高齢者も安心して暮らせる豊かな街づくりに貢献したいと思っています。

(2016年11月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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