人工乳房でがん患者喪失感緩和を 倉敷のヤングさん、製作会社設立

人工乳房を作る会社を立ち上げたヤング肇子さん

 乳がんの手術で乳房を失った女性用の人工乳房を作る会社を、倉敷市玉島乙島のヤング肇子(けいこ)さん(65)が立ち上げ、事業を始めた。全国で乳がん患者が増加する中、ヤングさんは「女性の喪失感を少しでも和らげたい」と話している。

 同市出身のヤングさんは、岡山県内の会社などで働いた後、2001年に渡米。米国人男性と結婚し、ハワイやアトランタで結婚式のプロデュース業などを営んでいたが、母親の介護のため15年に帰国した。

 米国で友人を乳がんで亡くした経験があり、がん患者の役に立ちたいと起業を決意。東京のメーカーで研修を受けた後、昨夏から事業を始めた。

 会社は「スカイクロスジャパン」。自宅を工房としてオーダーメードで対応する。樹脂とギプス包帯で胸部の型をとり、片方の乳房が残っていれば、それを基にシリコーンなどで成形。皮膚の質感や透けて見える血管まで丁寧に作る。再び顧客に会い、装着時に違和感がないよう微調整して仕上げる。肌が触れる面には特殊な接着剤が付いており入浴も可能。価格は10万~18万円。

 これまでに県内の40代と60代の2人に作製し、「温泉にためらわずに入れるようになった」「外出時に人目が気にならなくなった」などと喜ばれているという。

 国立がん研究センター(東京)によると、国内の乳がん患者は増加傾向で、16年の発症者は約9万人と推計。

 乳がんの手術で失った乳房は、医療機関で再建するケースもある。ヤングさんの技術は再現手段の一つで、将来はがん患者に作り方を教えながら、一緒に作ることも計画している。

 ヤングさんは「悩みにしっかり耳を傾けながら、がん患者に寄り添える存在になりたい」と、1月からはがん患者や家族らが不安や悩みを話し合う「メディカルカフェ」も日本キリスト教団玉島教会(同市玉島中央町)で開いている。

 問い合わせはヤングさん(090―1354―6522)。

(2017年05月04日 更新)

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