(7)視能訓練士 川崎医療福祉大学医療技術学部教授 感覚矯正学科副学科長 岡真由美

川崎医療福祉大学16期生で2012年3月に同大学院修士課程を修了した徳武朋樹さん。川崎医科大学総合医療センターで、斜視の視能矯正に当たっている

岡真由美医療技術学部教授・感覚矯正学科副学科長

「眼」の障がいを矯正

 視能訓練士は、1971年に制定された視能訓練士法に基づく国家資格を持った「眼(め)」の専門家で、国内には約1万3千人います。眼の機能に関するさまざまな検査や斜視・弱視の訓練、緑内障、白内障、網膜・硝子体(しょうしたい)疾患など眼科疾患の視能評価およびロービジョンケアなど多岐の領域に携わっています。

 川崎医療福祉大学感覚矯正学科視能矯正専攻は、全国で初めて4年制大学の視能訓練士養成機関として開設され、これまで674人を輩出してきました。

 16期生の徳武朋樹さんは川崎医科大学総合医療センター(岡山市北区)の眼科で、斜視や弱視の患者に対して必要な検査を行い、医師と相談の上、視能訓練や指導をしています。物が二つに見える複視の不自由さを改善することや、視能発達に重要な小児期の治療に携わることの責任は大きいものの、日々働きがいを実感しています。

 河原眼科クリニック(岡山市北区)に勤務する2期生の星原徳子さんは、麻痺(まひ)性斜視に対して積極的に視能矯正を行い、見ることに関する日常生活の支援に貢献しています。同時に、発達障がい児の視能管理について言語聴覚士や小学校教諭との連携にも努めています。

 斜視は眼の位置の異常で、片眼の視線がそれている状態です。小児期に生じる斜視は原因不明がほとんどです。発症頻度は3歳児で約0・3%、学童で約0・7%と報告されています。斜視があると、両眼視機能の発達に支障を来す場合があります。両眼視機能は、両眼を一つのまとまりとして使い、物を立体的に見たり、外界に奥行きを感じたりする能力です。そのため斜視を早期発見、早期治療することが重要で、3歳児健診に視能訓練士が参加している自治体もあります。

 斜視の視能矯正の目標は眼の位置を正すことと、可能な限り両眼視機能を向上させることで、両者は相互に影響し合っています。斜視の視能矯正では、屈折(遠視、近視、乱視)を矯正する眼鏡を装用することも重要です。眼鏡には眼の網膜に鮮明な像を映して脳に伝えることや、眼のピント合わせと眼の動きのバランスを保つ働きがあります。

 一方、中高齢者においては麻痺性斜視の発症率が増加します。麻痺性斜視には複視の症状が現れます。複視になると、立体感や遠近感が消失し、車の運転や階段の昇降、読書などの日常生活に不自由さが生じます。物の見え方は、他の人と共有することができないため、不自由さを理解されず精神的な苦悩を感じる方もいます。視能訓練士は、複視を訴える方の病態を評価するとともに、不自由な日常生活の動作や活動についてお聴きし、個々の患者に応じた視能矯正法を立案して実施します。

 麻痺性斜視は、発症後6カ月間に自然に治癒する可能性が高いのですが、中には治癒しにくく、複視が残る場合もあります。日常生活が制限されることから、早期に眼科を受診することが望ましいといえます。

 少子高齢社会においては、さまざまな視能障がいを持つ方々に対して、日常生活を快適に過ごせるように支援することが視能矯正のゴールです。小児の視能障がいの予防、早期発見・治療は、心身の健全な発達に欠かせないことはいうまでもありません。また、高齢者が眼の健康を保ちながらいつまでも社会参加できることは、誰もが望んでいることです。

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 川崎医療福祉大学(086―462―1111)

 おか・まゆみ 九州保健福祉大学保健科学研究科博士課程修了。1990年から川崎医科大学付属病院、岡山市内の病院に勤務したあと、2007年、川崎医療福祉大学准教授、15年から教授。日本視能訓練士協会指導者等養成委員長、日本斜視弱視学会理事、岡山市出身。

(2017年05月22日 更新)

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