(5)単顆型人工膝関節置換術(UKA)について 天和会松田病院整形外科医長 松田和実
【写真1】関節内視鏡手術後 軟骨変性を認める
【写真2】TKA症例 手術前(写真左)、【写真2】TKA症例 手術後
【写真3】UKA症例 手術前(写真左)、【写真3】UKA症例 手術後
(写真左から)【写真4】初診時MRI所見、【写真4】関節鏡下骨孔作成、【写真4】UKA術前関節鏡所見 軟骨の消失を認める
松田和実整形外科医長
10年ほど前までは、体重のかかる軸を変え、関節を温存できる高位脛骨(けいこつ)骨切り手術か、膝関節を全て人工物に置き換える全人工膝関節手術(TKA)を施行していました。ただし、高位脛骨骨切り手術は術後に骨切した部分の骨癒合までの時間がかかることで、適応が限られ最近は減少しています。
一方、TKA=写真2=は術式が確立しており、成績も安定している(特に痛み)ことで、飛躍的にその症例数が伸びてきました。ところが、その侵襲の大きさから、術後の膝関節の動きがなんとか自転車に乗れる程度に制限され、日常生活動作の制限を受けることもあり、患者さん側の満足が得られない症例もあります。
術前の膝関節の動きの著しく制限される場合や関節全体の変性が著明な場合はTKAの適応となりますが、関節鏡を行い関節の外側もしくは内側のみの変性で、靭帯(じんたい)機能に問題がなく膝関節の動きが良好な場合にTKAを行うと、その侵襲の大きさから先程述べたような満足が得られない結果となってしまいます。
そこで約5年前から当院では、残念ながら効果が持続せず、痛みの改善がみられない症例のうち、関節の片側のみの変性で靭帯の損傷がなく可動域の良い症例に対しては、関節の一部だけを人工関節に置換する単顆(たんか)型人工膝関節置換術(UKA)=写真3=を施行しています。
UKAは、手術侵襲がTKAに比べ少なく靱帯が温存できて術後の動きが良好なため、患者さんの満足度が高いという特長があります。
関節鏡手術で対応できる症例もありますし、人工膝関節手術が必要な場合に片側の置換のみ(UKA)で対応できるか、全て置換(TKA)する必要があるかは膝関節の状態によって異なりますので、膝痛にお悩みの方は一度整形外科専門医にご相談されることをお勧めします。
症例=写真4=は、69歳の女性で4年前から右膝の内側のみに痛みがあって受診されました。エックス線とMRIによる検査で変性を認めたため、関節鏡手術を行い、変性軟骨部を除去し同部に骨孔(こつこう)をあけ軟骨除圧再生を促しました。術後2年間は疼痛(とうつう)がありませんでしたが、その後徐々に痛みが出現してきました。膝関節内側のみの変性で靱帯には問題がなかったのでUKAを施行しました。
現在、術後2年経過していますが、痛みもなく膝関節の動きも良好で、患者さんの満足も得られています。(なおUKA手術時は、川崎医科大学付属病院整形外科、難波良文教授のご協力をいただきました)
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天和会松田病院(086―422―3550)
まつだ・かずみ 倉敷青陵高校、川崎医科大学卒。岡山大学病院、岡山赤十字病院、坂出市立病院勤務などを経て1994年1月から天和会松田病院に勤務。日本整形外科学会整形外科専門医、日本抗加齢医学会専門医。
(2017年08月21日 更新)
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