治療歯の“健康”維持するには 山下敦・岡山大名誉教授に聞く

治療した歯の寿命を延ばす研究に取り組む山下敦岡山大名誉教授

 岡山大名誉教授の歯科医山下敦さん(83)=岡山市=は長年にわたり、金属やセラミックで歯を修復するクラウン(補綴(ほてつ)歯)をはじめ、取り外しの入れ歯(義歯)など「治療した歯」の寿命を延ばす研究に取り組んでいる。7月に横浜市で開かれた「日本補綴歯科学会学術集会」で、これまでの研究成果を後進に伝えた。その内容について聞いた。

 ―通常の補綴歯はどれくらいの寿命があるのか。

 クラウンなど歯に固定するタイプは10年で1割、20年で約5割、取り外しの義歯は、10年経過で約半分が機能しなくなると言われている。

 ―長持ちさせるためにはどうすればよいのか。

 補綴歯が傷むのを防ぐのは「きちんと磨いて虫歯菌を減らす」に尽きる。だがブラッシング時間が短く、歯ブラシが歯垢(しこう)に当たっていないので病原菌が残っている人が多すぎる。口腔(こうくう)の病原菌を検査せずに、ただ歯磨きだけ指導をしている歯科も見受けられる。私の歯科医院で20年間正しい歯磨き、除菌方法を指導した人の補綴歯を調べたところ、9割近くが機能して健康寿命に貢献していることが分かった。

 ―正しい歯磨きの方法は。

 まず清涼剤の入った歯磨き粉は、すっきり感が得やすく磨き時間が短くなるので使わない。歯ブラシの角度は歯に対して45度、5ミリの円を描くように細かく動かす。うまくできない人は、1日2、3回、洗口用の除菌水でブクブクうがいを20~30秒行ってほしい。歯科で処方されるものは効果が高いが、薬局などで売っている市販品でもある程度は効果がある。歯科医院で口の中をきれいにしても、1週間で元の状態になってしまうので、自宅で正しいケアを継続することが何より大切だ。

 ―今後、市民や後進の歯科医に訴えていきたいことは。

 歯科医は口の中の細菌検査を必須にしてほしい。客観的なデータに基づき、患者に指導できる。口の中の健康は、糖尿病や認知症など、さまざまな疾患とも関係しているとされる。“健口”が幸せな人生“健幸”につながるという考え方をもっと広めていきたい。

(2017年09月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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