ロコモティブ症候群の予防法は 岡山大病院・鉄永倫子医師に聞く

鉄永倫子医師

 骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で日常生活に影響を及ぼす「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称・ロコモ)」。腰痛、膝痛などの症状が現れ、放置すると、介護が必要になるリスクが高いとされる。運動やバランスの取れた食生活を心掛け、ロコモを予防することが大切だ。骨と関節の日(8日)を前に、岡山大病院整形外科助教の鉄永倫子医師(38)に日常生活で取り組める予防法、最新の治療法などを聞いた。

 ―ロコモの人は予備軍を含め、全国で4700万人と推計される。

 患者は男性より女性の方がやや多い。平均寿命が延びる中、健康な日常生活が送れる「健康寿命」をいかに長くするかが重要だが、平均寿命と健康寿命には差があり、厚生労働省の資料によると2013年時点で男性は9・02年、女性は12・40年。女性が要支援・要介護になる原因の約3割はロコモとされ、男性の約3倍に上る。ロコモの主な原因疾患は骨粗しょう症、変形性膝関節症、変形性脊椎症が挙げられ、女性の場合は三つ全てを患っているケースも目立つ。

 ―健康寿命の延伸に向け、国もロコモ予防に力を入れている。

 政府は22年までに「ロコモ」の認知度を80%まで高めるとの目標を掲げている。関連学会も、社会に正しい知識や予防法を広め、重症化する前に整形外科を受診するよう促す「ロコモチャレンジ!」に取り組んでいる。予防に有効なのは適度な運動、適切な食生活、禁煙。50代から60代前半の人は1日1時間、65歳以上の人は40分間の歩行を心掛けてほしい。運動というと構えがちだが、家事も立派な運動。例えば、10分の水やりは約8分の歩行、10分の掃き掃除は約11分の歩行に置き換えられる。

 ―腰痛や膝痛など何らかの痛みに悩む人は多い。

 「痛みの悪循環」という言葉がある。痛みがあるから動かない、運動しない。動かないから筋肉が硬くなる、痛みを起こす物質が生じる―という悪循環を指している。痛みが慢性化すると、日常生活にも影響を及ぼす。近年は慢性的な痛みのある患者をチーム医療でサポートしている。医師、理学療法士、看護師、薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカーらがそれぞれの立場で患者に接し、適切な治療につなげる方法だ。薬だけに頼るのではなく、認知行動療法など心理的アプローチも含めて多角的に治療することが大切だろう。

(2017年10月07日 更新)

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