こころの扱い方1~認知症でも大丈夫~

 慈圭病院(岡山市南区浦安本町)で4月1日に開かれたメンタルヘルス講座で、同病院の石津秀樹副院長が「認知症でも大丈夫」と題して話した。講演要旨は以下の通り。

長寿社会への備え

 長寿社会が到来し、認知症はごく身近な病気になってきました。今後は一人暮らしの高齢者が増え、介護者不足も予想されており、地域で助け合い認知症高齢者にやさしいまちづくりを進めなければなりません。

 皆さんが介護の専門家になり、認知症の人の支援者になるにはいくつかのコツを覚えなければなりません。その時のために、どうすればよいのか考えておくことは大切です。今回は認知症の予防や治療ではなく、認知症の人の心のあり方を学んでみましょう。

BPSD(心理・行動症状)はこころ次第

 もの忘れをしたり物事が分からなくなったりした経験が重なることから2次的に生じる気持ちの変化や行動症状をBPSDといいます。

 アルツハイマー型認知症の人が汚れた下着を隠すのはなぜでしょう。失禁してしまった自分を恥ずかしい、叱られたくない、情けないと思うのは本人の立場になれば理解できると思います。その時に、恥じらいの気持ちを受け止め、排泄があったことを喜べるかどうかで、相手の気持ちのあり方は違ってきます。叱ったり怒ったりすれば、失敗を認めず反論したり怒ったりするだけになります。

嫉妬妄想も大丈夫

 夫にいい人がいると言いだした嫉妬妄想の人の気持ちを考えてみましょう。ご主人は元気に町内の交流会に出かけます。自分は料理の味付けが下手になったから辛いと叱られるばかりで、寂しい、役立たなくて情けない、という気持ちが逆に、悪いのは夫が浮気をするからだ。自分は悪くないのだという物語にすり替わります。否定したり、叱ったりしてもますます興奮するばかりです。そんな時は、寂しさを理解して一緒の時間を大切に過ごしてみましょう。できることをやってもらい役割を持たせて褒めてあげましょう。たくさん「ありがとう」と言ってみましょう。嫉妬するのは好きな証拠です。嫉妬妄想のからくりを理解できれば行動あるのみ、楽しい介護を目指しましょう。

備え型の介護

 認知症とは何か、認知症の人はどう考えているか、私達は何を支援できるかを考えるのは楽しい介護のコツです。これまでは問題が起こってから対応する手遅れ型支援でしたが、これからは、問題が起こる前にからくりに注意して、問題が起こらないように備える支援が望まれます。これからも明日の我が身に備えてメンタルヘルス講座で一緒に勉強していきましょう。
 

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(2017年12月13日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

医療人情報

  • 副院長  石津 秀樹
    山口県立下関西高校、岡山大学医学部卒。岡山赤十字病院、岡山大学病院勤務を経て慈圭病院研究部長。2014年4月から副院長。日本精神神経学会(専門医、指導医)、日本老年精神医学会(専門医、指導医)、日本認知症学会(専門医、指導医、評議委員)など。

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