岡山大病院が「造血細胞移植手帳」配布 受診時提示、かかりつけ医と連携

造血細胞移植患者手帳の利用方法

造血幹細胞移植を受けた患者の情報を記入し、移植施設とかかりつけ医が連携してサポートするための患者手帳

 岡山大学病院は、白血病などの治療で造血幹細胞移植を受けた患者が携帯する「造血細胞移植患者手帳」の配布を始めた。かかりつけ医などを受診する際に提示し、移植についての情報を正しく伝え、重篤な合併症が起きた場合や緊急時にも適切に対応できるよう役立てる。

 白血病や重症の再生不良性貧血などに対し、ドナーから提供された骨髄液や、へその緒の臍帯(さいたい)血など血液をつくり出す幹細胞を移植する治療が進歩し、多くの患者が長く生きられるようになった。移植後、病状が安定した患者は一般の医療機関で健診を受けたり、転居してかかりつけ医が変わったりする場合があり、移植施設と他施設との連携が課題となっていた。

 患者手帳は日本造血細胞移植学会が統一様式を整え、全国どこでも通用する。中国ブロックの移植推進拠点病院に指定されている岡山大学病院は、中国5県分の1千冊を作製し、昨年12月から各移植施設を通じて患者に配布している。岡山県内では、同病院、国立病院機構岡山医療センター、倉敷中央病院、川崎医大付属病院がある。

 文庫本サイズ52ページの手帳には、患者が受けた移植の種類、抗がん剤や放射線の使用量、移植された幹細胞が患者の体組織を攻撃するGVHD(移植片対宿主病)の経過などについて、移植施設の担当医が書き込む。移植施設の担当部署、夜間・休日の緊急連絡先も記入する。

 一方、かかりつけ医や一般の医療機関は、患者が受けた健康診断の受診日や、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を患っていないか記録しておく。また、インフルエンザなどのワクチン接種は患者の免疫状態を考慮する必要があり、移植施設側が手帳に記して依頼し、かかりつけ医が対応する。

 移植患者は、抗がん剤や放射線の影響による二次がんのリスクが高まる▽GVHDが慢性化して皮膚症状、目や口の乾燥などが続く▽性機能回復や成長の遅れなどで精神的にも不安定になる―など、さまざまな合併症に悩む場合があり、手帳でも留意を呼び掛けている。

 岡山大学病院血液・腫瘍内科の藤井伸治講師は「一般の医療機関や開業医に患者手帳を知っていただき、母子手帳のように、地域医療全体で移植患者をフォローする体制をつくりたい」と話している。

 岡山大学病院だけでも、毎年50人前後の患者が幹細胞移植を受けており、患者手帳は今後増刷する。

(2018年02月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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