心理的アプローチで慢性疼痛緩和 川崎医科大・就実大グループ

西江宏行講師(左)と岩佐和典准教授

 川崎医科大の西江宏行講師(麻酔学)と就実大の岩佐和典准教授(心理学)らの研究グループは、腰痛などが3カ月以上続く慢性疼痛(とうつう)患者に対し、心理的アプローチによる治療で成果を生んでいる。薬物療法では改善しなかったケースで痛みが緩和し、QOL(生活の質)が向上。国内には2千万人を超える患者がいるとされ、保険診療実現へ向け、全国規模での臨床試験実施を目指す。

 患者自身が行動や考え方を変えられるよう促す認知行動療法が治療の柱。川崎医科大付属病院(倉敷市松島)に3カ月間通院してもらい、痛みから気をそらす心の持ち方を臨床心理士から教わりながら、痛みでできなかった散歩や体操といった活動の時間を徐々に増やす。リラックスできる呼吸法も実践する。

 2016、17年に、過去の薬物療法で効果がなかった男女の患者8人(30~70代)に行い、痛みの感じ方やQOLの変化を調べた。痛みは4人で軽減し、感じる強さが10段階評価の8から、ほとんど感じない2へ改善した人も複数いた。日常の行動での支障や不安の有無といったQOLの指標の数値も5人で平均4割上昇した。

 慢性疼痛は身体だけでなく心理的な要因も大きいとされる。一度痛みを経験すると不安や警戒心が増幅。長期間に及ぶとうつ状態を引き起こし、さらに強い痛みを感じて悪循環に陥るケースも多い。国立精神・神経医療研究センター(東京)によると、認知行動療法は世界的に科学的根拠に基づく治療として幅広く行われているが、日本では薬物療法が中心という。

 西江講師らは今後、同センターや大阪大などと連携し、保険適用を目指した100人以上の大規模臨床試験を共同で実施していく。

 西江講師は「長引く痛みで仕事を辞めざるを得ないケースもある。薬物療法と比べ、認知行動療法は副作用の心配が少ないので、ぜひ広めていきたい」とし、岩佐准教授は「今後より効果の高いプログラムを開発したい」と話している。

(2018年04月02日 更新)

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