(4)地域交流 古民家カフェ 万成病院リハビリテーション課主任 森安有岐子

万成病院が地域の古民家を改修して開設した「地域交流古民家カフェこだま」

古民家カフェのオープン当日は地域住民や関係者が座敷を埋め、予想以上のにぎわいとなった=4月21日

古民家カフェには本格的な日本庭園があり、池には鯉が泳いでいる

森安有岐子リハビリテーション課主任

 ●地域交流カフェ「こだま」

 「ちょっとお花を摘みに来ない? 野菜の苗も持って帰ってね」

 土曜日の午後、地域交流カフェ「こだま」を開く準備をしていると、机に置く花があるかどうか気遣って、いつも地域の方が声をかけてくれます。

 当院は地元の岡山市・谷万成町内会と協力し、地域の公会堂をお借りしてこの地域交流カフェを開設しました。「医療や介護の専門職とゆるやかに出会い、ひとりひとりが健康で、支え合える地域づくりを目指す」のが目的です。地域の皆さんにいつまでも親しまれるような名前を募集し、「呼べばこたえる仲間づくり」をイメージして、「こだま」と命名していただきました。

 心身の健康について気軽に相談できる関係づくりを目指し、精神科医師、看護師、作業療法士、管理栄養士、精神保健福祉士などが運営スタッフとして参加しています。専門職によるミニ講座や健康チェック、健康体操などを行い、この2年間、多くの方が「こだま」に足を運んでくださいました。スタッフも毎回、充実感に満たされています。

 ●支える地域づくり

 地域の方々とは道を歩いていると声をかけ合う間柄になり、カフェでの楽しいお話や、ミニ講座で学んだ情報を共有しています。今後の地域づくりを共に考えていくことができるカフェでの時間は、私たちにとってもかけがえのないものとなっています。

 物忘れがありちょっと心配、認知症かもしれないという時期の方は、病院受診をためらいがちになりますが、このカフェに来て、私たち医療・介護の専門職と顔見知りになり、安心して早期受診へつながったこともありました。

 また、近年核家族化が進み、独居の高齢者が増えている中で、地域の方たちと交流を持つことや、外出する機会があるということは、互いに孤独感を癒やすことにもなります。今では地域の方々の貴重な居場所となってきています。

 ●「古民家カフェ」オープン

 地域交流カフェの活動から、今年4月、新たに当院近くの古民家を改修した拠点が誕生し、「地域交流古民家カフェこだま」としてリニューアルオープンしました。この古民家は地域でもよく知られた築100年以上の古き良き建築物であり、日本庭園や大きな池もあります。

 改修に当たり、昔の建築の良さを残しながらも、地域の皆さんが集える場所としてさまざまな工夫を施しました。1966年に日本で作られたピアノも残っており、調律師の方に修理を依頼し、見事な音色を取り戻すことができました。

 オープン当日は予想をはるかに超える大勢の方においでいただき、古民家カフェ内は座る場もないほどにぎわいました。参加された方からは「最近身近にない古民家で大変落ち着きます」「近所の方との交流が少ないので、こういった場所ができたことをうれしく思います」「住み慣れたこの土地で、万成病院のお世話になりながら暮らせることをありがたく思います」など、たくさんの感想を聞かせていただきました。

 最近、テレビニュースや新聞で「空き家問題」という言葉を頻繁に聞くようになりました。他にも少子高齢化、人口減少、相続など多くの社会問題があります。古民家を活用した「地域交流カフェこだま」は、認知症の方も含む高齢者が住みやすく、生き生きとその人らしく暮らしていけるよう、精神科医療からの町づくりの一翼を担っていきたいと思います。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 もりやす・ゆきこ 川崎医療福祉大学リハビリテーション学科卒。作業療法士として、2000年に万成病院に入職。介護支援専門員、認知症キャラバンメイト取得。岡山市出身。

(2018年07月16日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP