真備の三村医師が診療所を再開 「地域医療途絶えさせない」

被災した診療所の状態を確認する三村さん夫妻。仮設診療所で地域医療の新たな一歩を踏み出した=15日、倉敷市真備町尾崎

 西日本豪雨で浸水した倉敷市真備町尾崎の呉妹診療所(内科・小児科)が、敷地内の仮設スペースで診療を再開させた。平屋の診療所は7日、天井の上まで水没して機能を失ったが「地域の医療を途絶えさせてはならない」と院長の三村啓爾さん(74)が決断した。

 エックス線撮影装置、血圧計といった医療機器・器具は水没した。カルテも水に漬かったり、流されたりしたが「頭に入っている」(三村さん)という患者情報に加え、公的機関から取り寄せた過去の診療情報を基に、新たな一歩を踏み出した。

 再開に当たっては医療・保健支援のため公的機関や医療団体、ボランティア団体などが連携した「倉敷地域災害保健復興連絡会議」(KuraDRO(クラドロ))のサポートを受けた。応援の医師、看護師らを派遣してもらい、テントで15日に診療をスタート。20日にはプレハブが新たに設けられた。

 旧川上町(現・高梁市)で医療機関に勤務していた三村さん。妻幸子さん(71)の古里で開業したのは1996年4月だった。医師1人、看護師2人態勢で「世間話のできる診療」をモットーとして住民に寄り添い、患者は真備町地区のほか、国道486号でつながる矢掛町からも訪れた。

 三村さんは「ほとんどの患者さんは病気だけでなく生活も含めた長い付き合い。どんなに困難な状況でも、この場所で診療を続けたい」と話す。真備の“赤ひげ先生”の元には再開後、既に30人ほどが訪れたという。

(2018年07月20日 更新)

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