24施設連携で高齢101人救う 床上浸水で孤立した総社の特養

床上40センチまで濁流が迫った当時の状況を説明する藤岡理事(右)。県内24施設の連携プレーが入所者の窮地を救った=総社市日羽、さくばらホーム

 総社市日羽の特別養護老人ホーム「さくばらホーム」が西日本豪雨による浸水被害で孤立し、介護度の高い入所者101人が一時、命の危機にさらされた。濁流は床上に達し、入所者は水位が下がった安堵(あんど)もつかの間、猛暑との闘いが始まった。窮地を救ったのは高齢者施設、病院などホームのSOSに応えた岡山県内24施設の「連携プレー」だった。

 近くを流れる高梁川の水があふれ、鉄筋一部2階のホームに濁流が迫ったのは、県内に大雨特別警報が発令された6日だ。水位は7日午前0時すぎ、1階の床上約40センチに。101人が横になるベッド床面が迫っていた。「これ以上、上がらないでくれと祈るだけだった」。藤岡善行理事は振り返る。

 夕方、水がようやく引いた頃になると、次は猛暑による熱中症が危ぶまれた。ライフラインが途絶え、空調は使えない。入所者は大半が要介護4、5の高齢者。チューブで栄養を胃に送る「胃ろう」の人も多く、移送が急がれたが「足」となるホームの車は全て水没していた。

 櫻井浩之理事長が助けを求めたのは、社会福祉法人の経営者で構築する無料通信アプリ・LINE(ライン)のグループだった。7日夜、メッセージを送ると県老人福祉施設協議会、県社会福祉法人経営者協議会が呼応し、各地の特養などへ移送を要請。櫻井理事長が別に連絡を取った総社市の病院は、川崎医科大総合医療センター(岡山市)などに協力を呼び掛けた。

 8日、各方面から車が続々と駆け付け、全入所者の大移送が始まった。同センターは医療の優先度が最も高い15人を受け入れ「あと1日遅れていれば命が危なかった」と外科の山辻知樹部長。

 ホームによると、1981年の開所以来、浸水被害の経験はなかったといい、櫻井理事長は「急な要請にも関わらず、関係施設の迅速な対応で101人の命をつなぐことができた」。最多の約20人を運営施設で受け入れた雪舟福祉会(総社市)の守安伸聡事務長は「24もの施設が協力した迅速な移送は、岡山でかつて例がないのではないか。今後の災害対応を考える上でも意義のある連携となった」と話す。

(2018年07月22日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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