被災の子どもー心をケアするには 川崎医大付病院の赤池医師に聞く

被災した子どものケアについて話す赤池医師

 西日本豪雨で命の危険を感じるような場面に遭遇したり、自宅や学校が浸水したりしてショックを受けている子どもは少なくない。そうした体験が心身の不調につながるケースもある。周囲の大人はどう向き合い、ケアするべきか。川崎医科大付属病院小児科の赤池洋人医師(41)に聞いた。

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 大規模災害は子どもの心に大きなストレスを与える。眠れない▽怖い夢を見る▽体がだるい―といった不調が挙げられ、つらかった出来事を急に思い出したり、逆に考えないようにしたりすることもある。検査で体に異常がないのに、頭痛や腹痛などを訴える場合は心身症かもしれない。無感情や訳もなく涙が出るときは、鬱(うつ)になっている可能性がある。

 特に幼児や小学校低学年の子はうまく言葉で表現できないため、じっとしていられなかったり、兄弟やペットをいじめたり、友達と遊べなくなったりもする。「赤ちゃん返り」もその一つだ。

 それらは被災時には自然な反応とも言えるが、長く続くと心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われる。症状が1カ月以上続き、しんどそうなときは病院へ。「死にたい」などと思うようならもっと早めに。中学生以上は心療科、小学生以下は小児神経科や児童精神科がある病院を受診するといい。

 ケアで必要なのが安心させることだ。適度にボディータッチをしながら話を聞き、「大丈夫だよ」と語り掛ける。災害について子どもに尋ねられたら、分かりやすい表現で説明する。その際、うそはつかない。大人を信用できなくなるから。中高生は片付けや弟妹の面倒を見るといった役割を与え、「助かったよ」と感謝の気持ちを伝えることが、前向きな改善につながるだろう。

 遊びも大切で、ストレス発散や気持ちの切り替えになる。夏休みは普段よりも友達と過ごす機会が減りがちで、被災した状況下ではさらに少なくなるだろう。安心して遊べる場所や催しを提供することが求められる。

 もう一つ、気掛かりなのが、避難所にいる発達障害の子どもたちだ。環境の変化に敏感で、イレギュラーなことが苦手なため、突然大きな声を出したり、興奮したりするかもしれない。周囲の大人は、そうした子どもの存在や特性を理解し、受け入れてほしい。

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 国立成育医療研究センターのホームページで、被災時の子どもの心身のケアについてまとめた冊子や関連情報が公開されている。冊子のダウンロードは(https://www.ncchd.go.jp/kokoro/disaster/to_protected.pdf)から。

(2018年08月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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