「起立性調節障害」症状や治療は 岡山大大学院・岡田准教授に聞く

岡田あゆみ准教授

 思春期の子どもを中心とした病気の一つに、だるさやめまい、頭痛などが続く「起立性調節障害(OD)」がある。自律神経の不調が要因で、朝起きられず不登校の要因にもなっているという。県教委は医師、養護教諭による委員会を立ち上げ、本年度中に学校での対応などをまとめたガイドラインを策定する予定だ。メンバーの岡山大大学院の岡田あゆみ准教授(小児医科学)に症状や治療法などを聞いた。

■ 症 状

 本来、人間は立っていても座っていても、全身の血流を安定させることができる。自律神経の調節機能によるものだ。この機能が不調になると、体を活性化させて血圧を上げる「交感神経」と体を休めて血圧を下げる「副交感神経」のバランスが崩れる。起き上がった際、体や脳への血流が少なくなり、頭痛や立ちくらみ、全身の倦怠(けんたい)感といった症状が出る。午前中、特に調子が悪く、なかなか起きられないケースが多い。

 急に身長が伸びるなど、身体の発育が進む思春期に多くみられ、日本小児心身医学会によると、軽症も含め小学生の約5%、中学生の約10%がODと推計されている。明確な原因は分からないが、遺伝的な体質や精神的ストレス、生活習慣などが関係するとみられている。

■ 治 療

 「立ちくらみやめまいがする」「朝なかなか起きられず、午前中は調子が悪い」といった症状を確認したり、血圧の検査をしたりして総合的に診断する。

 ただ、治療法で決定的なものはない。外来では、体を循環する血液量を増やすため水分の十分な摂取、血液を送るポンプの役割がある下肢を鍛える運動などを指導している。

 重症の場合は症状に合わせた薬を服用するが即効性はない。成長に伴って改善することが多いが、3年かけても回復するのは全体の8割程度。より重症だとさらに長期的な治療が必要になる。焦らず少しずつ生活の質を上げていくという考え方が必要だ。

■ 周囲の理解

 朝起きられないと、家族や教員から「怠けている」などと言われることがある。余計にストレスを感じることで、病気がさらに悪化し、不登校に陥るパターンは避けなければいけない。ODの社会の認知度は決して高いとは言えないだけに、周囲の理解が何より欠かせない。

 逆に気を遣いすぎるのもよくない。声を掛けず、日中も寝転んだままの生活が続けば、病気を悪化させることがある。食事や外出、授業、部活動など、本人が体調に合わせてできる生活の工夫や活動を一緒に考えてほしい。ODの子どもにとって、理解者は心強い存在になる。

 県教委によるガイドラインづくりは5月末から始まっている。ODのチェックリストや教員ら向けの対応法などをまとめる予定だ。積極的に活用してほしい。

(2018年09月03日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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