乳幼児の頭蓋骨変形へ新治療法 岡山大病院、データ活用し微調整

手術を受ける前(左)と治療後(右)の1歳11カ月の男児(画像の一部を加工しています)

 岡山大病院(岡山市)は、病気で変形した乳幼児の頭蓋骨を、手術で丸みを帯びた自然な形にする新たな治療法を確立した。同じ年代の標準的な頭の形を、コンピューター断層撮影(CT)などの画像から国内で初めて統計的に導き出しており、そのデータを活用する。昨年4月に始め、これまで男女5人全ての患者で求める形を実現した。

 対象は「頭蓋骨縫合早期癒合症」と呼ばれる病気の子ども。赤ちゃんの頭蓋骨は急速な脳の増大に対応できるよう七つのピースに分かれているが、この病気は一部や全部が早い時期につながって頭蓋骨が大きくならず変形してしまう。

 岡山大病院は、額付近の骨を前側に広げて頭蓋骨の容積を増やす従来の治療法より、自然な形にできる手法を検討した。医師の主観に左右されない標準的な形を求め、2016年までの5年間に別の病気で受診した0~6歳の220人余りで、頭のCTと磁気共鳴画像装置(MRI)の画像を解析。頭の中央部から骨までの長さを約20カ所で測り、200人余りの平均値を基に6歳まで月齢や年齢別の標準形を割り出した。

 手術は形成外科と脳神経外科が連携。つながっている骨を5センチ四方の10ピース前後に分割し、各ピースにねじを装着する。ねじ先端をワイヤで1日1~2ミリずつ多方向に引っ張り、7~10日間かけて標準の形になるまで拡張する。国内の一部施設で取り入れられている手術法で、分割した骨片を一つの方向だけに延ばす一般的なやり方と比べて、きめ細かく形を調整できる利点がある。

 治療した1歳2カ月~2歳8カ月の5人のうち4人は後頭部を拡張した結果、自然な形を実現。1歳11カ月で手術を受けた男児の母親(36)は「人目を引くような頭の形から子どもの将来が不安だったが、他の子と変わらなくなり、希望が持てるようになった」と喜ぶ。今年3月に処置を受けた女児(2歳)も経過は順調で、同病院は治療の有効性を確認できたとしている。

 形成外科の徳山英二郎助教は「本人と家族が将来にわたって病気で悩まずに生活を送れることが願い。標準的な治療法となるようさらに実績を重ねたい」と話している。

 頭蓋骨縫合早期癒合症 頭蓋骨が前後に細長くなったり、真上から見て三角に近い形になったりと変形する先天性の病気。狭い骨の中に脳が押し込められ、その発達に影響を及ぼす可能性が指摘されている。数千人に1人の割合で発症するとされる。

(2018年09月25日 更新)

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