岡山県が認知症理解へVR導入 研修始まり症状や感覚を疑似体験

VRで認知症を疑似体験する参加者

送迎車から降りる際、高い建物の上にいるような感覚を再現したVRの映像(シルバーウッド提供)

 認知症への理解を深めるため、岡山県は23日、患者の症状などを疑似体験するVR(仮想現実)システムを使った研修事業を始めた。講義などでは実感を得にくく、感覚を共有することで当事者の立場に立った支援につなげようと2018年度の新規事業として導入。当面は市町村の担当者らを対象に開き、施設管理者や患者の家族らにも実施する。

 初日は県分庁舎(岡山市中区古京町)であり、3市の13人が参加。360度の視界に映像が流れるゴーグル型のVR端末とヘッドホンを装着して、距離感がつかめない「空間認識障害」の患者が送迎車から降りることをためらう場面を想定したプログラムに臨んだ。

 端末には、高い建物の上に立って目の前に車道が見える映像が流れ、降りるよう促す職員の音声が聞こえると参加者は「怖い」「無理無理」と声を上げた。終了後、「正面に職員が立って手を差し伸べれば不安は小さくなるかも」といった意見が出た。

 赤磐市地域包括支援センターの女性(30)は「疑似体験すれば認知症の人の感情に共感できると思った。ボランティアらの研修にも取り入れたい」と話した。

 県は18年度予算で950万円を確保して、VR端末を30台配備。高齢者住宅の運営などを手掛ける「シルバーウッド」(東京)が開発した六つのプログラムを用意している。要請があれば施設などへ出向くことも計画している。

 県内の認知症高齢者は、16年度の推計で6万6355人、25年度には7万8534人に上る見通し。

(2018年10月23日 更新)

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