松岡良明賞の西井研治氏に聞く 肺がん予防へ禁煙支援

西井研治氏

 がん撲滅に貢献した個人、団体を顕彰する山陽新聞社会事業団の第23回「松岡良明賞」を受賞した岡山県健康づくり財団付属病院(岡山市北区平田)院長の西井研治氏。肺がんの早期発見・治療に長年取り組み、予防を目的とした禁煙のサポートにも尽力してきた。西井氏に、肺がんをはじめとした呼吸器疾患で苦しむ患者の減少に向けた決意などを聞いた。

 ―肺がんはがんの中で最も死亡者が多い。禁煙支援に乗り出したきっかけは。

 喫煙者に肺がんが見つかると既に進行していることがよくある。そこで「たばこを吸わない人を増やそう」と、1990年に禁煙相談を始めた。2006年に禁煙治療が保険適用となり、今では禁煙外来はたくさんあるが、当時は東京にあったくらいで岡山にはなかった。併せて電話相談も10年ほど行った。一般の禁煙経験者がアドバイザーとして相談に乗り、医学的な質問には私が応じていた。

 ―これまでに約800人を禁煙に導いた。

 禁煙相談を始めた当初は家族からの相談が多く、当事者は嫌々連れて来られていた。そのため成功率は低く、10人に1人か2人くらい。最近の来院者は「病気になった」「妻が妊娠した」など動機がしっかりしていて、禁煙の意志が固い。いい補助薬が出てきたこともあり、成功率は6、7割に上がっている。

 ―低線量のコンピューター断層撮影装置(CT)を使った肺がん検診の有用性を研究している。

 2000年度に県内で初めて、CTを使った肺がん検診を笠岡市で実施した。肺のエックス線検査で異常がなかった979人を対象に調べ、5人ほどに肺がんが見つかった。11年度からは、CT検診の受診者と未受診者を10年間追跡調査し、肺がんによる死亡率を比較する研究に全国の医師らと取り組んでいる。近年は小さくても転移の可能性がある腺がんが増えている。CTならより小さながんを見つけられるので、早期発見に役立つはずだ。

 ―結核医療にも尽力してきた。

 結核は特に高齢者に多い。健診で見つかる人は1、2割。大部分がせきやたんなどの症状で気付き、既に家族にうつってしまっていることもある。誰かにうつす前に治療に入れるよう、高齢者施設の職員らに対し、疑わしい症状のある利用者への声掛けをお願いするなど、早期発見への啓発活動を進めている。

 ―今後の活動は。

 肺がんをはじめとした呼吸器疾患の予防と早期発見に引き続き力を入れる。予防では禁煙とともに、他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」の防止が重要だ。国立がん研究センター(東京)の推計によると、国内では受動喫煙による肺がんや虚血性心疾患などで年間約1万5千人が死亡している。今年7月には、受動喫煙対策を強化する「改正健康増進法」が成立した。岡山でも独自の条例ができるよう、県禁煙問題協議会のメンバーらと協力して機運を高めたい。

 にしい・けんじ 専門は呼吸器内科。1981年岡山大医学部卒。県健康づくり財団厚生町クリニック所長などを経て2002年6月から同財団付属病院長。同病院と岡山大病院で禁煙外来を担当。15年4月から県内の医療関係者らでつくる県禁煙問題協議会長を務める。日本内科学会認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医など。岡山市南区あけぼの町。63歳

(2018年10月24日 更新)

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