バラの香り成分に抗うつ効果確認 川崎医療福祉大の講師グループ

上野浩司講師

 バラの主要な香り成分「フェニルエタノール」に抗うつ効果があることを、川崎医療福祉大医療技術学部の上野浩司講師(神経生理学)らの研究グループが突き止めた。フェニルエタノールを吸わせたマウスは、ストレス環境下でうつのような状態になりにくいことを確認。精神疾患の新しい薬や治療法の開発につながる成果として期待される。

 これまでにもバラの香りが人間のストレスホルモンの分泌を抑える働きを示す研究成果が報告されているが、上野講師によると、どの成分が作用しているかは明らかになっていないため、グループは香水や化粧品などに使われるフェニルエタノールに着目し効果を確かめた。

 実験では、密閉空間で15分間フェニルエタノールを吸わせたマウスと、何もしていないマウスのしっぽをそれぞれテープで固定し、逆さづりのような状態にして10分間放置。うつ傾向を示す行動で、あがくのをやめて動かなくなる「無動時間」の長さを調べた。

 10匹ずつ計20匹を比較したところ、通常のマウスは動かなくなる時間が平均して約8分間あったのに対し、フェニルエタノールを吸わせたマウスは2分~1分半短かった。グループは「フェニルエタノールがストレスを緩和させ、抗うつ作用を発揮することを示した実験結果」と分析している。

 研究は、川崎医科大精神科学教室などの協力を得て4月から実施。成果は8日、仏科学雑誌電子版に掲載された。

 上野講師は「メントールやかんきつ類の果皮に含まれるリモネンなど、バラ以外の香り成分についても、精神状態にどう影響を及ぼすか調べたい」と話している。

(2018年11月09日 更新)

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