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カレッジ旭川荘1期生 就労課程へ 障害者自立目指し企業見学や実習

銀行窓口で初めて預金口座の開設手続きをする神宝さん(左)。カレッジ旭川荘は4月から就労に向けた専門課程がスタートする

 知的・発達障害のある18歳以上の人が4年制の大学形式で学ぶ「カレッジ旭川荘」(岡山市東区西大寺浜)は4月に開設3年目を迎え、就労に向けた専門課程をスタートさせる。1期生は、自立に必要な知識や社会性を深めた前半2年間の教養課程から移行。企業見学や職場実習などを通じて就職を目指す。

 「印鑑を押す場所はここですか」。昨年11月、岡山市内の銀行窓口で、軽度の知的障害のある2年神宝遼太さん(20)=赤磐市=が、行員に自ら質問しながら初めて預金口座を開設した。カレッジでの学習の一環。「親任せだったお金の管理を考えるきっかけになった。就職も少しイメージした」という。

 カレッジは2017年4月、知的・発達障害者の高等教育の場として、社会福祉法人旭川荘(岡山市北区祇園)が開設した。障害者総合支援法に基づく福祉サービス事業で、学費は無料。全国でも珍しい一般教養を含む4年間のカリキュラムを提供し、現在、1、2期生各8人が在籍している。

 文部科学省の18年度学校基本調査によると、特別支援学校高等部からの大学・短大などへの進学率は1・97%で、知的障害者ではわずか0・40%。カレッジの赤木匠学院長は「本人のニーズに沿った就職や自立に導くには、幅広い知識を身に付けて経験を積み、職業観を育てる高等教育を保障することが大切」と指摘する。

 教養課程では基礎学力やコミュニケーション能力を高める自立訓練を実施。障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育の実現に向け、同じ敷地内にある旭川荘厚生専門学院の学生と共に、介護や茶道などの講義も受けてきた。

 発達障害のある2年寺田光波(みなみ)さん(23)=倉敷市=は「仲間と悩み事を話し合うことで、コミュニケーションの苦手な部分を自覚した」。中軽度の知的障害がある2年桑原直希さん(20)=岡山市=は「将来はグループホームの世話人になりたい」と夢を膨らませる。

 4月からの専門課程では、企業見学や就業体験、パソコンなどの技能習得を進める予定。障害者の就労継続支援A型事業所での大量解雇や、中央省庁などでの障害者雇用水増しが全国で相次ぐ中、障害者が安心して働ける場をどう確保するかが支援の課題となる。

 旭川荘の末光茂理事長は「障害者が豊かな人生を歩めるよう、カレッジ旭川荘を全国のモデルとして発展させていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年02月01日 更新)

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