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(5)関節リウマチと骨粗鬆症

(イラスト1)健康な骨では骨を壊して作りかえる作業のバランスが保たれているのに対し、骨粗鬆症では骨を壊す働きが強くなり、骨の量が減り構造が壊れていく

イラスト2

原田遼三医師

那須義久助教

西田圭一郎准教授

倉敷スイートホスピタルリウマチセンター 整形外科 原田遼三

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科運動器医療材料開発講座 助教 那須義久

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科機能再生・再建学講座 整形外科学准教授 西田圭一郎

 今回から、主に関節リウマチについてお話させていただきます。

 生物は絶えず体を壊しては作りかえる作業を繰り返し、その時に合わせた体づくりをしていきます。若いとき、年齢を経たとき、それぞれ体の形は変わっていきますが、骨もまたしかりです。骨を壊す細胞(破骨細胞)と、骨を作る細胞(骨芽細胞)が毎日お互い作業して、骨を作りかえていきます。

 高齢者や閉経後の女性などでは、生物的に、またホルモンの作用などで、骨を壊す細胞の働きが強くなり、骨の量が減少したり、骨の構造の異常が生じたりします。このような骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と呼ばれる状態では、骨がもろくなり、骨折する危険性が高まっていきます(イラスト1参照)。

 骨粗鬆症の原因のほとんどは、加齢や閉経に伴う性ホルモンの異常、栄養や生活様式などの環境要因です。年齢とともに骨がもろくなることは想像しやすいですが、例えば、お酒ばかり飲んで食事のバランスが悪くなることでも骨は弱ります。

 骨は体を支える臓器であり、適度な運動による負荷がかからないと、骨は痩せていきます。骨がもろくなると、転倒した際に骨折するリスクが高くなってしまいます(イラスト2参照)。特に背骨や股の付け根の骨が折れると、移動能力が低下して介護が必要となる場合もあります。健康的な生活を続けるためには、転倒しても骨が折れない予防的な治療介入が重要となってくるのです。

 原因は他に、骨粗鬆症の病気によって若年から引き起こされる場合があります。代表的なものとして、副甲状腺機能亢進(こうしん)症、糖尿病、慢性腎臓病、そして関節リウマチがあります。

 関節リウマチの患者さんは、発症早期から全身の骨の量が減少し、骨折リスクが高いことが知られています。関節リウマチ自体は主に関節の破壊を引き起こす病気ですが、関節が痛くなると動きにくくなり、さらに運動する機能が低下することで、骨が痩せていくといわれています。

 また、関節局所では関節リウマチによる炎症が引き起こされますが、同時に骨を壊す破骨細胞の働きも強めてしまい、関節近くの骨が痩せていきます。治療に用いるステロイドが骨粗鬆症の程度を強めてしまうことも分かっています。

 そのため、関節リウマチの患者さんは病気自体の治療を徹底するとともに、早期から骨粗鬆症を評価し、必要に応じて薬物療法を変更し、骨粗鬆症治療薬を導入するなど、骨粗鬆症の予防が重要となります。

 骨粗鬆症治療の目的は、骨折リスクを抑制して生活の質=QOLを高めることにあります。薬物療法の進歩で骨粗鬆症をある程度改善することが可能となっていますが、同時に栄養状態の改善や運動習慣の見直しに取り組み、転倒を避けるために運動機能を強化することも大切です。

 当院には関節リウマチの患者さんが多くおられますが、定期的に骨の量や筋肉の量を計測し、適切な運動療法や薬物療法をご提案しています。ご自身の状態を正確に知ることが効果的な運動療法や骨粗鬆症治療につながります。近隣の病院、医院にぜひご相談ください。

 次回は高齢で発症する関節リウマチについて解説します。

     ◇

 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 はらだ・りょうぞう 大阪星光学院高校、岡山大学医学部卒。津山中央病院、岡山大学病院、鳥取市立病院などを経て2016年から倉敷スイートホスピタル勤務。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会リウマチ医。

 なす・よしひさ 岡山朝日高校、徳島大学医学部卒。倉敷スイートホスピタルでは毎月第2、第4水曜日に外来・手術を担当。日本リウマチ学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会リウマチ医。

 にしだ・けいいちろう 高知県・土佐高校、岡山大学医学部卒。岡山大学病院運動器疼痛性疾患治療研究センター長併任。東京医科大学未来医学研究寄付講座客員教授。倉敷スイートホスピタルでは毎週木曜日に外来・手術を担当。日本リウマチ学会評議員・専門医・指導医、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会リウマチ医、日本整形外科学会脊髄脊椎病医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年02月04日 更新)

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