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患者に寄り添う「伴走者」に 倉敷平成病院(倉敷市老松町)高尾芳樹院長

高尾芳樹院長

開院当初からリハビリテーションに力を入れる倉敷平成病院。充実した専門スタッフを抱え、病気による機能障害の改善を目指す患者を支える

 ―昨年、開院30周年の節目を迎えられました。

 当院は倉敷中央病院の脳神経内科医だった高尾武男・現名誉理事長が、1988年に創設した脳神経疾患専門の「高尾病院」が前身です。翌年の改元に合わせて名称を改め、今に至ります。この間、「救急から在宅まで何時(いつ)いかなる時でも対応します」との理念の下、切れ目のない医療の提供を実現すべく体制を充実させてきました。

 神経系以外にも診療科を広げ、より専門的で高度な治療や検査を行う「倉敷ニューロモデュレーションセンター」「倉敷生活習慣病センター」「総合美容センター」「神経放射線センター」なども開設しています。救急受け入れ件数は年間2200件を超えます。倉敷市内の病院では3番目に多い件数です。

 介護老人保健施設「倉敷老健」、訪問看護ステーションやショートステイ、通所リハビリなどの機能を併せ持った「倉敷在宅総合ケアセンター」など系列施設も拡充し、病院を中核に8施設からなる全仁会グループを構成しています。

 ―病院の特徴の一つが、充実したリハビリテーションの体制ですね。

 脳卒中患者さんの多くは、体が思うように動かせなくなるなどさまざまな障害が起こります。その治療にはリハビリが欠かせません。高尾名誉理事長が当院を開設したのも、患者さんのQOL(生活の質)の向上のために、より積極的にリハビリを行いたいとの思いからです。当初は病院名も「高尾リハビリテーション病院」にするつもりだったそうです。

 リハビリ専門医と、理学療法士、作業療法士ら130人を超えるスタッフや看護師、介護福祉士らでチームをつくり、対応しています。急性期はもちろん、在宅復帰を目指す回復期の患者さんにも一貫した体制でリハビリを行っています。系列の介護事業所・施設での訪問リハビリや通所リハビリを含め、急性期、回復期、在宅での維持期と、ステージに応じたリハビリを実践しています。

 ―2017年に開設した「倉敷ニューロモデュレーションセンター」の治療が注目されています。

 脳神経外科が中心となり、パーキンソン病や“震え”などの不随意運動に対する「脳深部刺激療法(DBS)」と、慢性的な“痛み”に対する「脊髄刺激療法(SCS)」を行っています。手術で脳内や脊髄付近に専用デバイス(装置)を埋め込み、神経に微弱な電気を流すことで、病気や痛みの原因となっている神経の異常を改善します。

 高度な技術を要する治療とあって、実施施設は全国でもまだ限られています。当院では中国四国地方を中心に初年度は149人、18年度もすでに120人を超える患者さんへ手術を行いました。西日本で有数の実績です。

 パーキンソン病の患者さんの動きがよくなったり、薬の量を減らせたり、痛みのために仕事を制限せざるを得なかった患者さんが職場に復帰できたりと、大きな効果が出ています。

 ―患者と地域住民が病気について学んだり、健康相談を受けたりする「のぞみの会」は、毎回千人規模の方が参加するそうですね。

 高尾名誉理事長が倉敷中央病院に勤務していた頃に始まった、脳卒中の患者さんやご家族が集う会が母体になっています。患者さんやご家族、地域の方々が「受診」ではない形で病院の医師やスタッフとつながりを深める場として、毎年秋に開催しています。

 一日だけの催しですが、病気や治療法に関して医師が話す勉強会、患者さんによる体験発表、リハビリ体操、作品展示、健康相談など盛りだくさんで、管理栄養士が監修する弁当も味わっていただきます。「毎回来るのが楽しみ」と言われる方も多く、病院スタッフにとっても、関わった患者さんの現在の様子を知る貴重な機会です。

 当院の外来患者数は15年連続で増え続けています。のぞみの会などを通じて、患者さんや地域の方に当院の取り組みを理解し、信頼してもらっているからだと思っています。

 ―今後の病院の取り組みについて教えてください。

 ハード面では、近く病院の増築工事に着手します。手狭になった救急や外来の受け入れスペースを拡充して機能強化を図るとともに、より高度な手術ができる手術室を新設します。脳血管障害や認知症の診断に有用なSPECT(単一光子放射断層撮影)検査用の機器の導入、既存病棟の改築も計画しています。21年度の完成を目指して進めていきます。

 ソフト面では、スタッフの教育に力を入れます。例えば、私が専門とする脳神経内科領域は、治療に長い期間が必要となる場合が少なくありません。患者さんやご家族がその時何を求めているのか、しっかり話を聞き、“人生の伴走者”として寄り添い、支えていく姿勢が求められます。スキルアップを図るとともに、あらためて「患者さん本位」を徹底します。

 ますます高齢化が進む社会に適応できるよう、グループ内の連携をさらに密にしていかなければなりません。倉敷平成病院らしさを保ちながら、地域の医療機関や介護施設とも連携を深め、地域医療・地域包括ケアシステムの一翼を担っていきます。

 たかお・よしき 福山市出身。広島大学附属福山高校、鳥取大学医学部卒、同大学大学院修了。同大学医学部附属病院、倉敷中央病院を経て、1990年に倉敷平成病院に着任。97年から神経内科部長、98年から副院長を務め、2018年1月から現職。日本神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医、日本頭痛学会専門医、日本内科学会認定内科医、日本人間ドック学会専門医など。60歳。

 ■倉敷平成病院
倉敷市老松町4の3の38
086―427―1111
 【診療科】脳神経内科、脳神経外科、脳卒中内科、整形外科、リハビリテーション科など22
 【病床数】220(うち回復期リハビリ病棟91)
 【ホームページ】http://www.heisei.or.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年02月04日 更新)

タグ: 倉敷平成病院

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