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腎臓保護する機能解明 重井医学研究所グループ

古家野孝行研究員(左)と松山誠室長

 腎臓病の発症メカニズムの解明に取り組む重井医学研究所(岡山市南区山田)分子遺伝部門の古家野孝行研究員と松山誠室長らの研究グループは、腎不全が発症する前の初期段階ではダメージを受けた細胞の増殖を抑え、組織を守ろうとする機能が臓器にあることをマウスの実験で突き止めた。特定のタンパク質が関与していることも分かり、腎臓病の早期発見や治療薬の開発につながる可能性がある。論文を19日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。

 研究グループによると、マウスの腎臓につながる尿管を縛って7~10日で腎不全を発症させた。その際、初期段階の2~3日目に尿細管細胞内を観察すると、細胞の増殖を抑える「p21」と呼ばれるタンパク質が増えているのを確認した。

 一方、「p21」を作れないよう処置したマウスで腎不全を発症させると、組織が変化して腎機能を失うのが早まり、病状はより悪化した。この結果、「p21」がダメージを受けた細胞の増殖を抑えて組織の機能不全を防ぎ、臓器を保護する役割を果たしていると結論づけた。

 「p21」は正常な細胞では見られず、腎不全になった細胞にも少ないという。今後は、なぜ病気の初期段階にだけ増えるのかなどを詳しく調べる。

 古家野、松山両氏は「『p21』の存在量が病気の初期段階の指標となる可能性がある。その働きを活用した治療薬の開発も期待される」としている。

 日本透析医学会によると、2017年末時点で腎不全などによる慢性透析患者は33万4千人おり、岡山県内は約5100人。慢性腎不全になると、体内に老廃物がたまるため、透析治療や腎移植が必要になる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年08月20日 更新)

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