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(7)腎臓にやさしい生活を 岡山済生会総合病院透析看護認定看護師 大脇浩香

大脇浩香看護師

 糖尿病で血糖値が高い状態が続くと合併症が起こります。高血糖は血管内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)に重大な影響を及ぼし、血管が詰まったり、切れやすくなるなどの障害を引き起こします。障害が進んだ部位によって、網膜症や腎症などの合併症が発症します。

■糖尿病性腎症は心臓・脳血管障害の原因に

 糖尿病の合併症の一つに「糖尿病性腎症」があります。重症化すると生涯にわたって人工透析が必要となる病気です。わが国では毎年3万9千人が新たに人工透析を受けています。そのうち糖尿病性腎症が原因の4割を占めています。

 糖尿病性腎症になると、腎臓の機能が徐々に失われてしまいます。腎臓の主な働きは「血液をろ過して尿を作る」「体内の水分量や体液成分を調整する」「ホルモンを産生する」=表1=です。「肝腎かなめ」という言葉どおり、非常に重要な三つの役割を担っています。このうち一つでも支障が出ると命にかかわります。

 また、腎臓に障害が出れば全身に悪影響が現れます。例えば、血圧調節に影響が出ると高血圧を招き、それが引き金となって心臓病や脳卒中のリスクが高まります。造血機能に影響が及ぶと貧血になり、骨の代謝に影響が及ぶと骨の密度や強度が低下し骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を引き起こす原因になります。

■アルブミン尿測定で早期発見

 糖尿病性腎症になっても自分で気づける人はごくわずかです。初期はほとんど自覚症状がないからです。異変を感じたときには、かなり腎症が進んでしまっていることも多いです。症状がなくても、腎症は進んでいくので気をつけなければなりません。糖尿病性腎症は定期的にアルブミン尿を測定することで早期発見できます。自覚症状はなくても医療機関への定期受診が大切です。

 微量アルブミン尿が出現した時点で早期の糖尿病性腎症と診断されます。表2に糖尿病性腎症を悪化させる主な要因を示します。

 糖尿病性腎症を発症・悪化させる大きな要因の一つは高血糖が持続することです。糖尿病性腎症のもう一つの重要な悪化要因は高血圧です。家庭で血圧の測定を行い自身の血圧を把握することが重要です。

 腎臓の働きが低下した状態で食塩をとりすぎると浮腫や高血圧が生じ、心臓の働きが低下します。そのため、食塩の摂取量をコントロールする「減塩」=図1=が極めて大切です。浮腫の状態は図2のように調べます。

■生活を改善し悪化予防

 糖尿病性腎症はどんどん進行していく病気と考えられてきましたが、がんばって治療を継続すれば悪化を防止することができ、よくなることも多いことが分かっています。このため糖尿病性腎症がある程度進行しているからといってあきらめる必要はありません。糖尿病や高血圧を治療して、腎臓の機能のチェックを行い、糖尿病性腎症の進行度に合った治療を行うことが大切です。

 食生活や運動など生活習慣改善を続ければ腎機能の悪化は予防できます。腎臓にやさしい生活をして一緒に腎臓を守っていきましょう!

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 おおわき・ひろか 岡山済生会看護専門学校卒。2003年に岡山済生会総合病院入り。腎臓病看護専門外来を担当。透析看護認定看護師・慢性腎臓病療養指導看護師資格取得。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年10月07日 更新)

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